グットイブニング・トウキョウ【あほの坂田】 (ページ24)

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それからというもの、早坂さんは私に坂田くんのことをよく聞いてくるようになった。

好きな食べ物や趣味、嫌いなことなど、話題は多岐にわたり、果てには好きなタイプまで聞かれた。

坂田くんの好きなタイプの子に関しては、知らなかったので、「今度聞いてみるね」と言ってお茶を濁した。

なんとなく、坂田くんに申し訳ない気持ちが募っていく。だけど、早坂さんには逆らえない。

私の中の葛藤は日に日に大きくなっていった。

「Aちゃん、悩みごと？」

坂田くんの声で、私はハッとして顔を上げると、彼の顔が思った以上に近くて思わずのけぞる。

「えっと、……うん、そんなところかな」

誤魔化すように笑うと、坂田くんは怪訝そうな顔をした。

「俺でよければ、話聞こうか？」

「ううん、大丈夫。もう答えは出てるの。ありがとう」

私はゆるく首を振ると、坂田くんはそっか、とつぶやくと、

「何かあったら聞くから、ちゃんと言うんやで！」

そう、困ったように笑った。

そんな顔をさせたい訳じゃないのに、そう思うと、ますます胸が苦しくなる。

「うん、ありがとう。坂田くんは、優しいね」

心配させないように、笑顔を作る。

不器用な笑顔で、きっと坂田くんにはバレてしまっているだろう。

私はどうしようもできなくて、「そういえば、高校の近くに新しいカフェできたよね」と少し強引に話をうつした。