グットイブニング・トウキョウ【あほの坂田】 (ページ2)

今日:3 hit、昨日:22 hit、合計:90,528 hit

. ページ2

そのとき前の扉が開き、先生が教室に入ってきた。

「はいはい、静かにしてください。自分の席に座って」

眼鏡をかけたショートカットの女性教師はいかにもベテランといった感じで、初めての顔ぶれに緊張した様子もなく、なれた感じで手を叩いて騒ぎを静めた。

始業式の日になんとなく予想した通り、ともちゃんと私は、そのまま休み時間を一緒に過ごすようになった。

私達は教室の隅で、他愛ない会話をしながら、教室の風景の一部に上手く溶け込んだ。

他に女子は、4つのグループに分けられた。

1番クラスで権力を持っているのは、早坂さんという女子を中心としたグループだった。

先生とも友達のように話し、服装や髪型も、先生にちょっとだけ叱られてしまうという程度に着崩して、情報も、流行も、真っ先にそこから発信されているようだった。

彼女たちはメイクもバッチリしてきていて、髪も巻いていたり、少しだけ染めていたり、パーマをかけたりしていた。誰がこのクラスを覗いても、彼女たちがクラスで1番「上」だとすぐ分かるだろう。

もちろん早坂さんたちは男子たちとも仲が良く、男子グループで1番「上」で賑やかな坂田くんを中心とするグループの人達とよく一緒にいた。

私達はというと、クラスの中では「真面目で大人しい2人組」として認識されているようだった。

自分たちに対して安全だと認識した女子に対して、華やかな「上」の女子たちはたいてい、とても優しい。

自分たちが肉食獣で、私たちが草食獣であることを分かっているからなのか、それとも商品価値が明らかに違うから敵視する必要がないからなのか、私にはよくわからなかったが、話しかけられるといつも必死に、小さな声で返事をした。

そのうちの1人がこちらに近寄ってきて「ねえねえ」と声をかけてきた。

「Aさんたち、宿題やってきた？一限の、数学のやつ」

「う、うん。一応、やってあるよ」

「うわあ、さすが。真面目だなぁ。見せてもらっていい？」

「うん、間違ってるかもしれないけど……」

といいながら、綺麗に折りたたんだプリントを差し出した。

私の丁寧な時の並んだプリントを受け取ると、女の子はすぐ、またにぎやかそうな渦の中に帰っていく。

,