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電気もつけていないキッチンは、リビングから漏れる明かりが唯一の光源だ。
「…………センラ、離してよ」
「……………」
センラはしばらく黙っていた。静まり返ったキッチンでは、息をするのも難しい。
いつもと違う。
先程までも思っていたが、それどころではない。センラとはいつも、程よい距離感を保ってきた。表面にできた傷を舐め合うだけだったから、お互い深いところまで踏み込もうとはしてこなかったのだ。
けれど今日のセンラは、明らかに様子が違う。
いままで、センラは私の人間関係についてなにか言ってきたことはなかった。それと同様に、私がセンラの人間関係について口を出すこともなかった。今日はじめて、センラはそこに踏み込んできたのだ。
それが私には、怖く見えた。
早く逃げ出したい。明るいリビングに戻りたい。いまこの空気を壊さなければ、今までの私たちでは居られなくなるような気がした。
「ねえ、離してよ。ビール、取りたいんだけど」
いまさら、均衡を崩そうとされても、どうしたらいいか分からない。
「そんなん、あとでええ」
「なんで、そんなこと言うのよ」
「言うたやろ。俺はもう、逃げんのやめる」
「それと何が関係あんの……っ」
重ねられていた手が離れたと思ったら、頬をつかまれ、ぐりん、と後ろを向かされた。
「んっ………」
強引に唇を重ねられ、息が詰まる。体の向きを変えられて、背中を冷蔵庫に押し付けられた。何度も何度も、
「Aもそろそろ、ええんちゃうの？うらたんのこと。いつまで続けるん？」
「センラには関係ないでしょ」
言ってから「しまった」と思った。いつも話を聞いてくれている彼に対して、あまりにも失礼だ。そんなこと言うつもりなかったのだ。
ごめん、と口を開きかけたところに、ぬるりと舌が入ってくる。反論も抗議も、全部飲み込まれてセンラの思うがままだ。
彼が離れたのは、思考ができなくなる一歩手前だった。
「………センラ。今日、なんか変だよ」
タイピンを外して緩められたネクタイが視界に入った。青いチェックのそれは、去年の誕生日に私が贈ったもので、なんだか少し気まずい。
「…………すまん」
センラは蚊の鳴くような声で言って、そっと私から離れると、ひとりでリビングに戻ってしまった。私が我に返ったのは彼がリビングに戻って少ししてから。
玄関の閉まる音がしてからだった。
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ちょこ - 更新が止まってます！戻ってきてください！続き楽しみに待ってます！(´;ω;｀) (2022年3月9日 2時) (
レス) @page36 id: 5ad0b4ef6a (このIDを非表示/違反報告)
りょくちゃ(プロフ) - 続編待ってました...！これからが楽しみすぎる...更新楽しみにしてます！ (2021年4月2日 16時) (レス) id: f217387575 (このIDを非表示/違反報告)
りひと(プロフ) - いずりすさん» お久しぶりです。おまたせしました！また頑張りますのでよろしくお願いいたします！ (2021年2月20日 23時) (レス) id: f7fd8fd8e6 (このIDを非表示/違反報告)
いずりす - わぁあ!!!続編おめでとうございますぅう…!!!待ってましたぁ…。またりひとさんの作品が更新されるのもう…嬉しすぎて泣けてきます…。無理せずりひとさんのペースで更新頑張ってください!!!これからも応援してます!! (2021年2月20日 13時) (レス) id: 70d681a1bb (このIDを非表示/違反報告)
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