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シャワーを浴びたあと軽く身支度を整えてリビングに戻ると、センラはリビングのソファに座りテレビを見ていた。
ソファに包まったままのセンラに声をかけると、彼は振り返って私の姿を認めると気が抜けたようにふにゃりと笑った。
「ちゃんとあったまってきた?」
「うん」
毛布から手だけ出して、
「ならこっちおいで」
と手招きする。
まるで女の子みたいだな、なんて考えて彼の隣に腰をおろすと
「ちゃうって。こっち」
そういうや否や、センラの腕が伸びてきて引き寄せられ、私まで毛布の中に閉じ込められた。
「ちょっと、」
「あったかいなあ」
私の反論はお構いなしに、センラは私を抱きすくめた。どうやら、ホッカイロがわりにするつもりらしい。
「電話、大丈夫だったの?」
「なんとでもなるわ、あんなん」
「ま、確かにセンラに寄ってくる女の子はたくさんいるだろうし」
「………何?いま俺のことカッコイイって言うた?」
目を細めて笑い、口元に余裕を含ませた顔で、いつもと変わらない様子にほっとした。
「センラがカッコイイのは認めるよ。センラのこと好きじゃない子なんて、うちの会社にいないんじゃない?」
そういうと、センラは苦笑いとも照れくささを隠しているとも言えない笑いを浮かべた。
「ま、確かに会社の子からはいろいろお誘いされるけどなぁ………Aを除いて」
センラは私の頬を撫でると、自分の顔に向けた。それまでとは打って変わった鋭い目に見つめられて、ぴくり、と体を引いてしまう。
「な、なに?」
「1回くらい、俺の言うことに照れてるとこも見てみたいんやけどなぁ」
「センラ?」
私を真っ直ぐ見つめる声に、体が震えた。
「私、センラといる時はセンラしか見えてないよ」
「嘘ばっかり」
センラは吐き捨てるようにそう言って、小さくため息をついた。そのまま私に顔を寄せ、唇を重ねてくる。啄むような、軽く触れるだけのキスを繰り返し、センラの熱い吐息がかかった。
応えるでもなく拒むでもなく、静かに受け止める私の頬を両手で挟むと、キスをやめて再び私の目を見つめてくる。
そしてやがて、くっと目を細めて苦しそうに息を吐き出した。
「………さみしい」
そういったのは私だったか、センラだったか。
分からないまま、長い夜が始まった。
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あ(プロフ) - 初コメ失礼します。りひとさんの作品がとても大好きで過去作品も全て読ませて頂いております。続編もぜひ読みたいのですが、パスワードをお教えしてもらうことは出来ますでしょうか...?何分仕様が分からず、この場で聞くこと自体間違っていたら申し訳ありません。 (2021年2月10日 1時) (レス) id: e8d9509923 (このIDを非表示/違反報告)
りひと(プロフ) - あすかさん» 返信遅れてすみません。コメントありがとうございます。更新頑張りますので、今後ともよろしくお願いいたします。 (2020年12月14日 21時) (レス) id: d056bbadb9 (このIDを非表示/違反報告)
あすか(プロフ) - 初コメ失礼します!めちゃめちゃ面白くて見る度に評価押しちゃいます(笑)今1番を楽しみにしている作品です!更新頑張ってください(T_T) (2020年11月5日 21時) (レス) id: a6330c149b (このIDを非表示/違反報告)
りひと(プロフ) - いずりすさん» ありがとうございます。いつもと違うテイストに挑戦するので私自身もどきどきしています笑お楽しみいただけるよう頑張りますので、今後ともよろしくお願いいたします。いずりすさんも体調には気をつけてくださいね。 (2020年10月14日 22時) (レス) id: d056bbadb9 (このIDを非表示/違反報告)
りひと(プロフ) - Quuさん» ありがとうございます。お楽しみいただけるよう頑張ります。Quuさんもお体に気をつけてくださいね。今後ともよろしくお願いいたします。 (2020年10月14日 22時) (レス) id: d056bbadb9 (このIDを非表示/違反報告)
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