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相手が私の部屋にやってきたのは、ビールのロング缶を飲み終えた時だった。


インターホンがなって扉を開ければ、先程一方的に電話を切った相手が立っていた。


「遅いよ、センラ」


「さっき残業終わったんやからしゃあないやん。これでも急いできたんやって」


すらりと伸びた長い手足に、整った顔立ち。目立つ金髪の頭をして、彼は私の部屋に慣れた様子で入ってきた。


来るやいなや、彼は慣れた手つきでビールを1本取り出しテーブルに置いて、残りを冷蔵庫にしまい始めた。それが終わると今度はうっとおしそうに上着を脱いでハンガーにかけると、言って、我が物顔でソファにどかっと腰掛ける。


「とりあえず飲もか」


ふたりで缶を開けて、


「はい、おつかれ」


軽くぶつけて乾杯をして、一気にビールを流し込んだ。


「また………えらい飲みっぷりやな」


「飲んでなきゃやってらんないの」


「やっぱ今日、約束してたんや?」


「なんで知ってんのよ」


「だってうらたん、帰る直前に奥さんから電話かかってきて、慌てて帰ってったから」


「………そう」


私の不毛な恋愛事情を知っているのは、同期のセンラだけだ。


「A、いつまで続けるん?」


「いつまでだっていいでしょ」


そう返せば、彼は呆れたようにため息をついた。


自分勝手なのもわかってる。


自分で決めた恋愛のくせに、いつも勝手に傷ついてセンラに愚痴を聞いてもらってる私に、彼は呆れこそすれど、「もう諦めろ」と決して言わない。そこがセンラのいいところだ。


「そんなに好きなん?」


「うん、好き」


「分からんわぁ。なんでうらたんなん?」


センラが呆れたように言う。


「うっさい。だって好きなんだから。仕方ないじゃん」


そう。仕方がないのだ。うらたさんに嫌われたら、私は生きていけない。愛想をつかされたら、きっと死にたくなる。


だからこれはもう、仕方のないことなのだ。


机に突っ伏して項垂れる私を見て、センラは「あほ」と小突いた。



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(プロフ) - 初コメ失礼します。りひとさんの作品がとても大好きで過去作品も全て読ませて頂いております。続編もぜひ読みたいのですが、パスワードをお教えしてもらうことは出来ますでしょうか...?何分仕様が分からず、この場で聞くこと自体間違っていたら申し訳ありません。 (2021年2月10日 1時) (レス) id: e8d9509923 (このIDを非表示/違反報告)
りひと(プロフ) - あすかさん» 返信遅れてすみません。コメントありがとうございます。更新頑張りますので、今後ともよろしくお願いいたします。 (2020年12月14日 21時) (レス) id: d056bbadb9 (このIDを非表示/違反報告)
あすか(プロフ) - 初コメ失礼します!めちゃめちゃ面白くて見る度に評価押しちゃいます(笑)今1番を楽しみにしている作品です!更新頑張ってください(T_T) (2020年11月5日 21時) (レス) id: a6330c149b (このIDを非表示/違反報告)
りひと(プロフ) - いずりすさん» ありがとうございます。いつもと違うテイストに挑戦するので私自身もどきどきしています笑お楽しみいただけるよう頑張りますので、今後ともよろしくお願いいたします。いずりすさんも体調には気をつけてくださいね。 (2020年10月14日 22時) (レス) id: d056bbadb9 (このIDを非表示/違反報告)
りひと(プロフ) - Quuさん» ありがとうございます。お楽しみいただけるよう頑張ります。Quuさんもお体に気をつけてくださいね。今後ともよろしくお願いいたします。 (2020年10月14日 22時) (レス) id: d056bbadb9 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:りひと | 作者ホームページ:なし  
作成日時:2020年8月17日 20時

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