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「ほら、できたで。志麻くん、Aのこと離したって」
「ええ、もう？」
「ほら早く」
センラに声をかけられて、ようやく志麻に解放される。自分の椅子に座ってもなお心臓がうるさく跳ねていた。
4人の役に立てるならと思って快諾したのはいいものの、恥ずかしいものは恥ずかしい。整った顔が目の前にあったり、甘い言葉を囁かれたりすると、もうたまらなくなる。
物理的に危ない目にはあったけれど、これはこれで心臓に悪い。けれども、それ以上をしないでいてくれる4人はやはり優しいのだと思う。
「ほらA。山菜御膳やで」
ワラビは味噌汁と炊き込みご飯の具、油揚げの細切りと合わせた煮付け、ショウガをのせたおひたし、和え物に使われている。今日は徹底的にワラビづくしのようだ。
「あ。おひたしはこれかけて」
出されたのは醤油とポン酢。お好きな方をどうぞ、ということだろう。メインは別の山菜のようで、イタドリというらしい。テーブルにでてきた中で、いちばん大きな皿に盛ってある。
「おいしそう。なんか匂いは中華っぽいですね」
「ごま油と醤油で炒めたからかも。煮付けてもうまいけど、ワラビと被るから」
いただきます、と手を合わせてAは真っ先に箸を伸ばした。
「なにこれ！おいしい！」
しなやかなのに噛むとコリっとしている食感は、他に例える食材が思いつかない。ごま油と醤油の味付けも絶妙だ。
おいしいおいしいといって食べるAを見て、志麻と坂田もおずおずとそれに箸を伸ばした。
「うわ、うま。センラやるな」
「そうやろ？」
坂田の思わず零れた本音に、センラも満足気におかずを口に運ぶ。一方のうらたも何も言わずに次々と食べているのを見ると、どうやらお気に召したらしい。もしかしたら、食べるのに一生懸命で、話す暇がないのかもしれない。
ごま油の香りが食欲をそそり、これだけでおかわりがいけそうだ。とりつかれそうになる寸前で、食べるものをワラビに変えた。
ワラビは歯ごたえも残しつつ、しっかりとアク抜きもされていて、センラの料理の腕の問題もあるだろうが、料理のバリエーションも豊富でおいしい。
「こっちもおいしい。さすがセンラさん」
「センラ、もう家政婦だな、家政婦」
うらたが笑いながら言う。
「ええ、せっかくなら主夫がええわ。ね、A」
「ええ！？私ですか？」
「当然やん。だって俺が主夫なら、お嫁さんはAになるやろ？」
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ちょこ - とてもよかったです！その後話がもっと欲しい！ (2022年6月26日 23時) (
レス) @page23 id: 5ad0b4ef6a (このIDを非表示/違反報告)
伊織(プロフ) - 気づいたらこのお話に飲まれてました。とても素敵なお話をありがとうございました。他の作品も読みます！(*'▽'*) (2022年6月20日 21時) (レス) @page23 id: 020978a023 (このIDを非表示/違反報告)
ぷ(プロフ) - 読むたびに世界観に飲まれていきました。気付いたら最後まで読んでいました。素敵な世界を覗けてよかったです。ありがとうございました。 (2020年9月10日 20時) (レス) id: 5dd39aece4 (このIDを非表示/違反報告)
りひと(プロフ) - 水無。さん» コメントありがとうございます。お楽しみいただけたのであれば何よりです。今後とも応援のほどよろしくお願いいたします。 (2020年9月4日 23時) (レス) id: d056bbadb9 (このIDを非表示/違反報告)
水無。(プロフ) - ことで話にのめり込みやすかったですし、特に坂田さんの初々しいしい恋の表現の仕方には毎回きゅんきゅんさせられました。りひとさんの作る作品が大好きです。新作も前の作品も漁ってたくさん読みたいと思います。素晴らしい作品をありがとうございました！ (2020年9月3日 21時) (レス) id: 2fdfcf242b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：りひと
| 作成日時：2020年8月1日 11時
