ゴーストシップ ページ7
真っ白になった視界が徐々にぼやけ、うらたはうっすらと目を開けた。
「…………来た」
眼下には果てしない海が広がっている。
「おー！海や！」
移動魔法で到着したのは、ゴーストシップの甲板だった。夜の海は月明かりに照らされて波打っている。
……………ようやくここまでたどり着いた。
うらたは安心して大きく息を吐いた。はしゃぐ坂田を見て、luzは満足そうに頷いている。
「これでAも一安心やな！」
「………そうだな」
坂田の嬉しそうな声音に、うらたは頷いた。ここなら、きっと大丈夫だ。
「そういえば、Aを治せる医者ってどんなやつなん？」
「ああ、まふまふっていう幽霊でさ、」
「ちょっと、うるさいんだけど…………え？」
志麻に説明していると、後ろから聞き覚えのある声がしてうらたは振り返った。
「そらるさん、久しぶり」
「………うらたくん？」
甲板に眠たげに出てきたのは、うらたの顔見知りであるそらるだった。そらるはこのゴーストシップの船長だ。かなり力のある幽霊だから、魔物もこのゴーストシップにはうかつに手を出せないのだ。
元はと言えば昔、意識不明の重体だったうらたを発見したのは彼だった。
「そらるさん。まふ、いる？」
志麻の腕の中でぐったりとしているAの姿を見つけたのだろう。そらるは寝ぼけ眼をぱちくりとさせて、うらたたちを見た。全く状況が分かっていないのだから、当然かもしれない。
「こいつ、毒でやられてるから、まふに診てもらいたい」
うらたは簡潔に言った。それだけで伝わったらしい。
「………こっち」
そらるが背を向けて歩き出す。その背中を追うように、うらたたちは船内に足を踏み入れた。木製の船の床が、ぎしりと軋む。
連れてこられたのは、上階の奥の方にある医務室だった。風通しの良いこの部屋は医務室にするにはうってつけだろう。消毒液の匂いがするから間違いない。
「懐かしいな」
「………でしょ」
そういって振り返ったそらるに、うらたは懐かしさに目を細めた。この匂いも、よく覚えている。
まさか、またここに来る羽目になるとは思ってもいなかった。それも、人間の女のために。
「まふ、入るよ」
ノックもせずに扉を開けた先には、また懐かしい人物がそこにいた。
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りひと(プロフ) - 凍華＠ラさん» コメントありがとうございます。みなさまの応援のおかげで、ありがたいことにランキングに載ることができました。今後ともお楽しみいただけるよう更新してまいります。引き続きよろしくお願いいたします。 (2020年5月29日 19時) (
レス) id: d056bbadb9 (このIDを非表示/違反報告)
凍華＠ラ(プロフ) - よくランキングに載っている作品だったので、少し気になって読ませていただきました。本当に面白くて、一気読みしてしまいました。続きが楽しみです。無理のない範囲での更新、頑張ってください！ (2020年5月29日 12時) (レス) id: 960374666f (このIDを非表示/違反報告)
りひと(プロフ) - over the rainさん» コメントありがとうございます。お楽しみいただけたこと嬉しく思います。今後とも応援のほどよろしくお願いいたします。 (2020年5月26日 22時) (レス) id: d056bbadb9 (このIDを非表示/違反報告)
over the rain - 続編おめでとうございます。題名に惹かれ読み始めてこらあっという間に3作品目でびっくりです。応援してます。 (2020年5月26日 6時) (レス) id: a4bab14be1 (このIDを非表示/違反報告)
りひと(プロフ) - ありまさん» コメントありがとうございます。そう言っていただけて嬉しく思います。今後とも、何卒よろしくお願いいたします。 (2020年5月25日 18時) (レス) id: d056bbadb9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：りひと
| 作成日時：2020年5月24日 23時
