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「うらたくんたちの為だよ」
「俺たちの、ため？」
「どういうことなん？」
うらたと志麻がそらるに問いかけたのは、ほぼ同時だった。
「君たちと一緒に居るために、彼女は強くなろうとしてる。だから、間違っても止めさせようなんて思わないことだね。Aが自分の面倒を見れるようになって困ることなんてないんだし」
「俺らはそんなこと望んでないやん」
志麻が首を振るけれど、間髪入れずにそらるが言う。
「でも彼女はそう望んだ。君たちと居るために、そう決めたんだ」
「でも、」
「Aが自分自身を守れれば、生存率は上がる。それでなくても、ルシファーに狙われてるんだ…………それとも、自分たちが守るから、Aがそんなことする必要ないとでも思ってるわけ？」
うらたたちは言葉に詰まった。そらるはそんなうらたと志麻に追い打ちをかけるように続けた。
「君たちは彼女を守れなかった。だからAは死にかけた。これは決して変えられない事実だ。このままじゃ、彼女は近いうちに殺される。ルシファーによって」
今度こそ、うらたも志麻もなにも返せなかった。
そらるの言うことは正論だった。彼は淡々と、事実だけ痛いくらいにを突きつけてくる。
「まあ、これは俺の言い分だけどね。A自身はそんなことちっとも思ってないよ」
彼はそうしてふっと息を吐いた。それを見て、ようやくうらたと志麻も身体から力が抜ける。無意識のうちに、ずいぶんと力んでいたらしい。
「Aは、「ここに居ていい」って言ってもらえたのが嬉しかったみたいだよ。だから、その期待に応えたいんだって」
うらやましい限りだよ、とそらるは言った。
うらたと志麻はなにも答えることができなかった。
Aは、ここに居てくれるだけでいいのに。笑ってくれてるだけでいいのに。
彼女はうらたたちの想像をはるかに超えて、この世界に順応してきている。人間界から連れてきたときよりも、ずっと彼女の姿はしゃんとしているように見えた。
それはきっと、自分でなにかを決断し、成し遂げようとしているからだろう。
ほんの少しの寂しさを抱えながら、うらたは顔を上げてそらるを見た。
「あいつは、ほんとにそう言ったんだな？」
「こんなことで嘘つくわけないでしょ」
なら、自分たちがやるべき事はもう決まってる。
Aの期待に恥じないように、強くいること。
彼女が悲しまないように、生き抜くこと。
それだけなのだ。
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りひと(プロフ) - 凍華＠ラさん» コメントありがとうございます。みなさまの応援のおかげで、ありがたいことにランキングに載ることができました。今後ともお楽しみいただけるよう更新してまいります。引き続きよろしくお願いいたします。 (2020年5月29日 19時) (
レス) id: d056bbadb9 (このIDを非表示/違反報告)
凍華＠ラ(プロフ) - よくランキングに載っている作品だったので、少し気になって読ませていただきました。本当に面白くて、一気読みしてしまいました。続きが楽しみです。無理のない範囲での更新、頑張ってください！ (2020年5月29日 12時) (レス) id: 960374666f (このIDを非表示/違反報告)
りひと(プロフ) - over the rainさん» コメントありがとうございます。お楽しみいただけたこと嬉しく思います。今後とも応援のほどよろしくお願いいたします。 (2020年5月26日 22時) (レス) id: d056bbadb9 (このIDを非表示/違反報告)
over the rain - 続編おめでとうございます。題名に惹かれ読み始めてこらあっという間に3作品目でびっくりです。応援してます。 (2020年5月26日 6時) (レス) id: a4bab14be1 (このIDを非表示/違反報告)
りひと(プロフ) - ありまさん» コメントありがとうございます。そう言っていただけて嬉しく思います。今後とも、何卒よろしくお願いいたします。 (2020年5月25日 18時) (レス) id: d056bbadb9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：りひと
| 作成日時：2020年5月24日 23時
