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………眠れない。
まふまふに言われたことを考えていたということもあるが、眠ってしまったらまた悪夢に捕まってしまいそうで怖かったのだ。
静まり返った船内は、やはりゴーストシップと言うだけあって、少し気味が悪いような気もするが、この世界のデフォルトだと思えば大したことはない。
Aはそっとベッドから抜け出すと、部屋を出て甲板に出た。潮風が気持ちいい。こうしていると、ごちゃごちゃになった頭の中もスッキリしそうな気がした。
船の手すりにつかまって海を眺める。夜だから海の青さは分からないが、穏やかな波音が聞こえる。下弦の月が水面に浮かんでいた。
「あれ」
自分しかいないと思っていたので、Aは肩を震わせた。振り向くとそこには、見たことのない男性が立っている。ふわふわとした少し癖のある髪が潮風に遊ばれている。
「君は？」
男が言った。驚くほど柔らかい声に、Aは少しだけ緊張感を解いた。
「Aといいます」
「君が……そう」
男はAを知っているようだった。
「あなたは？」
「誰だと思う？」
不思議な人だと思った。初対面の人にこんな風に言われると普通は不快に思うものだが、なぜだか目の前にいる男性にはそれを抱かなかった。彼の持つ雰囲気がそうさせているのかもしれない。
「………月の妖精？」
しばらく考えた後にそういうと、彼はくすくすと可笑しそうに笑った。
「下界なのに妖精？面白いこと言うね」
そして、彼は笑いながら
「でも、気に入ったからそれにしよう」
と言った。
「妖精さんは、どうしてこんなところに？」
「俺はいつもここに来るから。Aは？」
彼はAの隣まで歩み寄ってくると、手すりに肘を乗せた。
「………私は、ちょっと眠れなくて」
「またナイトメアに捕まりそうで？それとも、他に悩んでることでもあるの？」
Aはぎょっとして妖精の顔を見た。深海のような瞳はどこか優しい色をしていて、彼女は息を飲んでからおそるおそる妖精に聞く。
「どうして知ってるんですか？」
「俺は月の妖精だからね。なんでも知ってる」
上手くかわされてしまったような気もするが、それ以上追求しようとしなかった。彼の持つどこか人を包み込むような雰囲気に、気を許してしまっていたからだろうか。
「………そうですね。そうなんだと思います」
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りひと(プロフ) - 凍華＠ラさん» コメントありがとうございます。みなさまの応援のおかげで、ありがたいことにランキングに載ることができました。今後ともお楽しみいただけるよう更新してまいります。引き続きよろしくお願いいたします。 (2020年5月29日 19時) (
レス) id: d056bbadb9 (このIDを非表示/違反報告)
凍華＠ラ(プロフ) - よくランキングに載っている作品だったので、少し気になって読ませていただきました。本当に面白くて、一気読みしてしまいました。続きが楽しみです。無理のない範囲での更新、頑張ってください！ (2020年5月29日 12時) (レス) id: 960374666f (このIDを非表示/違反報告)
りひと(プロフ) - over the rainさん» コメントありがとうございます。お楽しみいただけたこと嬉しく思います。今後とも応援のほどよろしくお願いいたします。 (2020年5月26日 22時) (レス) id: d056bbadb9 (このIDを非表示/違反報告)
over the rain - 続編おめでとうございます。題名に惹かれ読み始めてこらあっという間に3作品目でびっくりです。応援してます。 (2020年5月26日 6時) (レス) id: a4bab14be1 (このIDを非表示/違反報告)
りひと(プロフ) - ありまさん» コメントありがとうございます。そう言っていただけて嬉しく思います。今後とも、何卒よろしくお願いいたします。 (2020年5月25日 18時) (レス) id: d056bbadb9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：りひと
| 作成日時：2020年5月24日 23時
