グットモーニング・トウキョウ【センラ】 (ページ47)

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志麻はAお手製の昼食を食べて(揚げ出し豆腐にはやっぱり感動していた)、日が傾く頃に帰っていった。

センラは、Aとの共同生活の中で初めて心の底から安心して食事をとった。

いままでは、心のどこかでミカミのことを考えずにはいられなかったし、彼女がそのせいでどうかなってしまったらと考えるとぞっとして、夜中に目が覚めてしまうことも密かにあったのだ。

彼女は以前、問題が片付いてからと言っていた。

確かに想定外の形ではあったが、表立った問題は全て片付いたと言えるだろう。

そうしたら彼女は、どうするのだろうか？

ここに残るのか、はたまたあの自宅に彼女は帰り、前までのような生活に戻るのだろうか。

この生活と前とあとで変わったことはたくさんある。

それを彼女はどう、捉えるのだろうか。

あれから１週間、夜も眠れずに悶々とした末に、思い切って彼女を海へ連れ出した。

ようやく桜は見頃を迎え、桜並木が少しずつ薄紅色に色づいてきた。

思い切って今日連れ出したのは、何とかして彼女ともう一度話したかったからだ。

このまま生殺しのような目にあうのはまっぴらだった。

もう一度正面からぶつかってみて、それでも駄目だったら仕方がない。

家の中で顔を合わせるのが気まずくなるなら、前のような生活に戻ればいい。

ぼんやりと車の窓から海を見ているAを横目で見ながら、センラは唇をかんだ。

とにかく、今日という今日は、はっきりと決着をつけなければならない。

海のそばのレストランでずいぶん遅い昼食をとったあと、2人は腹ごなしに灯台に行くことにした。

センラが誘ったのだ。

遊歩道から砂浜におりて、波打ち際をぶらぶらと歩いた。

風が少し冷たくて、ジャケットのボタンをとめる。

カモメたちが泣き交わす声のほかは、風の音と、2人の足音しか聞こえなかった。

ゆっくりと歩いていくと、行く手にようやく白い灯台が見えてきた。

遠目には海外の教会にありそうな厳かな雰囲気に見えた灯台は、こうして近くでみるとどこにでもある灯台になってしまった。

灯台の隣には鐘がある。
ここは観光地にもなっていて、南京錠を掛けると恋が実るというモニュメントもあった。

「綺麗ですね。私、海は久々に来ました」

遮るもののない空と、真っ青な太平洋。
白い灯台は青い海によく映えた。