グットモーニング・トウキョウ【センラ】 (ページ32)

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まだ日も高かったので、彼女と買い物に出た。

歩いていくのは不安もあったので、センラが車を出す。
助手席にAがいるのは、不思議な気分だった。

最寄りのスーパーで、揚げ出し豆腐の材料と肉や魚など、数日分の食料を買い込む。

センラに聞くと、ひとりの時はコンビニ弁当で済ませることが多いらしく、夕飯はAが担当することになった。

朝食はそれぞれで。
互いにコーヒーはブラック派だったので、先に起きた方がコーヒーをいれることとなった。

「お昼はどうしますか？」

Aにそう言われて、そういえば彼女は弁当を持ってきていたな、と思い出した。

「Aちゃんは、お弁当だったっけ？」

「はい。お昼は外食にした方が良いですか？」

特売になっているたまごをみながら、彼女は言った。

「むしろ、俺の分も作ってくれたら嬉しいんやけど、」

あ、でも大変なら全然ええよ、うん!Aちゃんはいつも通り弁当作ってくれていいし!

言い訳するように早口でいうと、

「1人分も2人分も変わらないので、作りますよ」

と、ちょっとだけ可笑しそうに目を細めて彼女は言った。

明日は弁当箱買いに行かなきゃなぁと言いながら、彼女は卵をカートに入れた。

「センラさんは卵焼き、甘いのとしょっぱいの、どっちが好きですか？」

「うーん、しょっぱいの、かなぁ」

他愛ない会話をしながら、センラは平和やなぁと思った。

今朝の出来事が嘘のように思える。
彼女の静かな、平和な、ささやかな普通の幸せを守ってあげたいと思う。

「そういえば、揚げ出し豆腐ってどうやって作るんやろ」

レシピアプリを開いて、検索する。
横ではAが鶏肉を選んでいた。

照り焼きにするらしい。
彼女いわく、漬けておけば焼くだけでカンタンだし、弁当のおかずにも夜ご飯にも、つまみにもなるから便利なんだそうだ。

あ、そういえば家には調味料がほとんどなかった。あるとすると、砂糖と塩くらいだ。

それを彼女に伝えると、買っていきましょうか、と苦笑した。