グットモーニング・トウキョウ【センラ】 (ページ18)

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そのうち、志麻がいなくともセンラとAは食事をするようになった。

基本的にそれは平日の夜であることが多いため、センラがAのアパートに行っては夕飯を食べてから帰るというパターンが常だった。

夕飯を作るのはだいたいAだったが、たまにはとセンラが台所に立つこともあった。

彼女はセンラの作るオムライスがお気に召したらしく、それを作ってやると頬を緩ませて嬉しそうに食べるのだった。

呼び方も変わった。
センラは佐藤さんからAちゃんと呼ぶようになり、Aは折原さんからセンラさんと、名前で呼び合うようになった。

会社では絶対にみることの出来ない表情を見せるAをセンラは可愛らしいと思うようになった。

そこには、(志麻を除いては)自分だけに見せてくれる表情があるという満足感と、もっと見てみたいという好奇心も交ざってはいたが、それ以上に口数の多くないAとの過ごすゆったりとした時間が好きだった。

殺伐とした仕事の時間の中で、ほっとできる時間とでも言うと良いのだろうか。

なんにせよ、センラにとってAと2人で、もしくは志麻も含めて3人で過ごす時間は、なににも変えれぬ大切なものとなっていた。

年も明けて、仕事初めの日。

この日もセンラとAはコンビニで新商品を購入したあと、自然と足はAのアパートに向かっていた。

アパートにつくと、Aは少し錆び付いたポストを開け、郵便物を取り出した。
今日は年末年始分の溜まっていたものもあるようで、いつもより量が多い。

いつも彼女は、部屋に入る前に確認する。
そこには、DMやらチラシやらが数枚入っていた。

不動産のチラシ、学習塾のDM、人材派遣スタッフ募集、バイト募集のチラシ。

彼女は1枚ずつそれらを確認すると、いるものと要らないものに分けていく。

今日の最後は、一通の手紙だった。

差出人も、宛名も書かれていないそれは、他のチラシたちと比べて明らかに異質な空気を放っている。

Aはちらりと中身を見ると、珍しく驚いたように目を見開いた。

どうしたん、とセンラが声をかけると、彼女は手紙をすぐにしまい「なんでもないです。お待たせしました」とセンラに答えた。

彼女の手は、すこし震えていた。