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「レジ締め、終わったよ」
テーブルでモーニングメニューをさしていたもう1人のバイトの子に声をかける。
坂田くんと出かけてから、1週間が経った。
夏休みもあと残すところわずかとなり、朝晩は少しずつ冷え込むようになってきていた。
目を閉じれば、抱きしめられた腕の強さと、それに反比例したように震える声が鮮明によみがえってくる。
息ができないほど胸が締め付けられるような、坂田くんの言葉が、私の脳裏に焼き付いて離れない。
「A、帰るぞ」
キッチンからうらたさんが顔をのぞかせて、
「はい、着替えたら行きますね」
と返すと、彼は目の奥で笑って事務所に入っていった。
明日は、うらたさんと出かける日だった。
坂田くんは「私が好きになった人に恋をすればいい」と言った。
だから、「どっちかに決めなきゃ」じゃなくて「好きな人は誰なのか」を考えればいい。
そういえば、うらたさんとふたりで出かけるのはずいぶんと久しぶりな気がする。
坂田くんと再開した日に、突発的にショッピングに行っただけで、これといって約束してどこかに行くなんてことは、今回が初めてだった。
そんなことを考えながら着替えて、更衣室から出るとうらたさんが椅子に座ってスマホをいじっていた。
「うらたさん、お待たせしました」
「おう、じゃあ、帰るか」
うらたさんは私に気付くと立ち上がり、ゆっくりと歩き出した。
事務所の扉を開けて、外に出ると、半袖じゃやっぱり少し肌寒い。
カーディガン着てくればよかった、とすこしだけ心の中で後悔した。
「お前、寒くねーの？」
「ちょっとだけ。でも、大丈夫です」
「ったく、とりあえずこれでも着とけ」
うらたさんは、自分の着ていた薄手のジャケットを脱ぐと、私の肩にふわりとかけた。
「でも、うらたさんが寒いんじゃあ、」
「いいから。着とけって。明日せっかく出かけるのに、風邪ひいたら困るだろ」
ちょっとぶっきらぼうな言い方をしながら、うらたさんは私の右手を攫った。
「うわ、手まで冷たくなってんじゃん」
不器用なくせに、人のことはよく心配してくれて、優しい人だ。
「明日はけっこう歩くから、動きやすい格好で来いよ」
お前、ヒールとか履いたらコケそうだもん、とけらけら笑った。
「そんなことないですって！」
私の反論にもうらたさんはおかしそうに笑う。
「明日、楽しみにしてるからさ」
そう言った彼の翡翠の瞳は、柔らかだった。
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りひと(プロフ) - みかんさん» みかん様/ コメントありがとうございます！そう言っていただけて嬉しいです♪今後ともよろしくお願いいたします！ (2020年1月1日 10時) (
レス) id: d056bbadb9 (このIDを非表示/違反報告)
みかん - 完結おめでとうございます！りひとさんの作品大好きです。これからも応援しています、頑張ってください！ (2020年1月1日 9時) (レス) id: 6edfb9ce46 (このIDを非表示/違反報告)
りひと(プロフ) - しぃさん» しぃ様/コメントありがとうございます！そう言っていただけて嬉しいです！今後とも応援のほどよろしくお願いいたします！またコメントお待ちしておりますね♪ (2019年12月31日 20時) (レス) id: d056bbadb9 (このIDを非表示/違反報告)
りひと(プロフ) - まつりさん» まつり様/ありがとうございます！新年には新しい作品も投稿してまいりますので、今後ともよろしくお願いします♪またコメントお待ちしておりますね！ (2019年12月31日 20時) (レス) id: d056bbadb9 (このIDを非表示/違反報告)
しぃ(プロフ) - 完結おめでとうございます！とても好きな作品なので2人分のルートを作ってくださり、とても嬉しかったです！他の作品の更新も楽しみにしています (2019年12月31日 19時) (レス) id: 42c92e6201 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：りひと
| 作成日時：2019年12月24日 11時
