10* 好きだからこそ許せない ページ10
「Aちゃんおはよう!…って、うらさんおらんねんな」
「うん、ちょっと待っちゃったのが悔しいよ」
さかたんが俺から離れてAちゃんに駆け寄る。目に涙溜めてふにゃりと笑うAちゃんを見て、俺はうらたんにイラッと来てしまう。好きな子泣かせて、それで彼氏ってなんやねん。
「…嫌なら俺に移ってもええからね?」
「……移っちゃおっかな」
「え?」
ポロリと溢れ出た本音をすくい上げてぽつりと呟くAちゃん。さかたんは目を点にさせて驚いた。俺も口をあんぐり開けて目をぱちぱちさせながらAちゃんを見つめる。
「…は?なにそれ」
通りかかった別クラス(うらたんと同じクラス)のまーしぃが廊下を通りかかった際に聞いてしまったのか険しい顔して窓から覗いた。Aちゃんはじっと下を向いたまま情けなく笑った。
「浦田、もしかしたら私の事なんて好きじゃなかったのかもしれないよ。もう、冷めちゃってるのかも」
「は?んなわけ――――」
「そうかもしれへんな。辛かったな…」
まーしぃが窓からもっと身を乗り出して否定しようとした所をさかたんが塞ぐようにAちゃんに抱きついた。Aちゃんは泣くのを堪えて小さく嗚咽を漏らしながら唇を噛み締めていた。
この場合、好感度が上がるのはどちらなのだろうか。
「おい、まーしぃどうし…た…」
磁石に惹き付けられたようにさかたんとAちゃんに近寄った。慰めるように触った頭。髪の毛はサラサラで艶と微かなシャンプーの香り。止めることは出来なった。その手は背中にゆっくり滑らせていき、とんとんと心音と同じテンポで優しく叩く。
ひどく困惑しているうらさんの顔が脳裏から離れなかった。幸福感に満たされた直後に酷く罪悪感に押しつぶされた。友情と愛情が両立無いなんて微塵も思ってなかった。
「…A?」
震えた唇から出た安心を求める言葉。だがそれはガヤガヤ騒がしい朝の学校の生活音に紛れて砕けた。言い訳が思いつかずただ黙ってしまう志麻くんと純粋に心配するさかたん。そこに付き添いをする俺は、完全にうらたんの『敵』、そのものだ。
「―――なぁ、なにしてんの?」
明らかに先程と声を変え、明るい口調で話しかけた。なにも、見なかったことにしてる。俺もさっきのうらたんは見なかったことにして、振り向いた。さかたんも気付いてぱっとAちゃんから手を離した。
「Aちゃん、泣いとったから…」
「泣いて、た?」
11*ケンカしてるだけ、別れてない。→←9* 仲直り後は超素直なのに
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Leaf(プロフ) - あ、はぁ………尊い。 (2018年10月8日 16時) (レス) id: b8ce9cd4fa (このIDを非表示/違反報告)
結月(プロフ) - 初めまして、コメント失礼致します!陰ながらずっと読んでおりました!凄く大好きな作品です^^*作者様のうらたさんのとても好きなので、また読める機会があれば嬉しいです。完結、おめでとうございます。 (2018年10月7日 11時) (レス) id: 286dc51d91 (このIDを非表示/違反報告)
めめ(プロフ) - maiさん» コメントありがとうございます。坂田さんの出番を少し増やしてみますね^^* (2018年9月28日 22時) (レス) id: b10484d3c8 (このIDを非表示/違反報告)
mai - ほんっとうにこの作品好きです!私は坂田家ですが、うらさんも好きなので楽しんで読んでます。坂田が出てくるとにやにやしてたり笑 (2018年9月24日 10時) (レス) id: 77b863b750 (このIDを非表示/違反報告)
めめ(プロフ) - 宮本 ?さん» コメントありがとうございます。世界中のこたぬき様へのプレゼントみたいな短編小説になればと思います〜! (2018年9月15日 23時) (レス) id: b10484d3c8 (このIDを非表示/違反報告)
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