ドッキリ系歌い手、今日も頑張ります 【歌い手】

[NG編] 羊飼いの少女と風邪 ページ28

｢……あ"ー、マジで風邪ひいたやん｣


食欲がない。熱っぽい。というか熱ある。だがしかし不運な事に昨日電話かけまくって風邪ドッキリしてたから面倒な事になった…。

でも体全然動かん…なんか買ってもらいたいねんけど。

とりあえずるすくんに電話してみよか…。


『もしもし？』

｢るすくん、暇？｣

『え、あーうん』

｢風邪ひいたんやけど、ちょっとなんか買って来てくれへん？｣

『…そのドッキリ昨日やったやん。2回やって楽しいん？』

｢うぇ、っ、ごめん｣


なんかモヤモヤして謝って直ぐに電話を切った。ため息が漏れた。駄目だ、ぐにゃっと視界が歪んだ。だれか、誰でもええから…。

歪んだ視界の中、誰かに電話をかけた。


『…もしもし？』

｢ぁ、まふくん？、風邪ひいたんやけど…｣

『はいドッキリだね！！！はい今日は僕の勝ち！ふふふ、そのドッキリそらるさんに仕掛けてたでしょ？』

｢うぁ、…ちがっ｣

『てな訳で…ごめんね、僕今から仕事だから。切るね』


だめだ、まふくんもダメだった。病は気から、というものか。心細くなって、もう誰も信じてくれないのかなって思うとなんだか気分が悪くなる。


｢…あ、天月くん｣

『ん？もしもし？A？』

｢ごめん、…体調悪くて、…ご飯買って欲しいんやけど……｣

『……うん？ドッキリ？』

｢違うんやってば…ぁ…｣

『ん？泣き真似？…さすが演技派歌い手ちゃんだね』

｢……っもう、いいわ｣



私は電話を切った。いつもなら気にならないほどの天月くんの言葉もなんだか今日はグサリと刺さる。

誰か、他に……。


｢…まーしぃ｣

『うぉ？Aから電話てドッキリ以来やな』

｢……しんどい｣

『センラにやったドッキリか？』

｢……ばか｣

『え？ちょ、まっt』



お腹空いた、しんどい、頭痛い、…じわりと視界が歪んだ。

もういいや。寝てはよ熱さげよ…。




これじゃまるでイソップ物語の

『羊飼いの少年と狼』だ＿＿＿


＊


目が覚めた。

が、目の前が上手く見えない。暖かい。寒気はするが暖かい。もそもそと動いてみるとそれは何か大きくゴツゴツしていて、赤い服……。


｢…っ、さかたん？｣

｢んー…っ｣

｢寝とるし…｣


だが後ろにも同じような感覚がある。するり、手が足を滑らせた。｢ひぅ｣と声を漏らしてしまうが犯人は分かった。


＊

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