君の犬になってもいいよ【東海オンエア】

犬、ときめく ページ13

「なんか仲良いね、二人」

あたし達を見ていたゆめまるが平和そうな口調でふとそう言った。初めて話しかけられた、と思いつつもあたしは引きつった笑いを返す。

「クラス遠いのに、いつの間に仲良くなったの？」

思いもよらぬ問いかけに動揺する。ゆめまるからすれば取るに足らない質問でも、あたしにとっては生死を問われる質問。りょうに目配せをして、あたしは先に言葉を発する。

「しょ、食堂でよく会うんだよね。それで仲良くなったんだよね」

話を合わせてと目で訴えるが、彼の視線はあたしを見ずに何か楽しい事を考えてるような動きをした。冷や汗がこめかみを伝う。

「食堂だったかなぁ」

「そうだよー！あたしがりょうの前に並んでて、りょうが唐揚げ買ってて」

「そうだっけ」

「えー！！忘れちゃったのバカだなー！」

いや、バカはあたしだ。バカみたいにでかい声で話して、ドーン！と音が出そうなぐらいりょうに自分の肩をぶつける。そして「ゆめまるって名前可愛いね」と、後ろを歩く彼の名前へ話を強引にシフトチェンジした。ゆめまるはあたし達のやり取りを見て何を気にする訳でもなく笑ってる。

「そー、変わってるってよく言われる」

「覚えやすいし、いいじゃん」

「名前負けしちゃうんだよなぁ」

「勝てるような人間になればいいんだよ」

内容のない会話を繰り広げたあと、何がそんなに楽しいのか、ヘラヘラとほくそ笑む背の高いりょうの腕を引いて「話合わせて！」と小さな声で怒った。

「俺の友達と仲良くなって欲しいんだもん」

「誰かさんのせいで他のことに神経使いすぎて、普通の会話できないの！」

「だってAがいちいちそういう反応するから楽しくて」

「あたしは楽しくない！」

「分かった。でもそんなに怒ったら可愛い顔が台無しだよ」

どうしてこう彼は、軽々しくそんなクサいセリフを言っちゃうんだろう。そしてその言葉に揺さぶれるあたしもあたし。
別にりょうのことは好きじゃない。でも可愛いとか言われたら、女の子は意識しちゃって動揺してしまうもんなんだよ。それをりょうは知ってか知らずか、連発するし朝から疲労する。ボロが出て彼等にバレるのも時間の問題だ。

「…もうあたし先行く」

りょう軍団にサヨナラを告げて、あたしは早歩きで彼等から距離を置いていく。

「ばいば〜い」

ゆめまるの間抜けな声が後ろから聞こえた。あたしは振り返らずに夢中で通学路を歩いた。

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