44.ガラスと屑 ページ44
骨と皮膚を突き破りそうなほど、心臓が大きく鼓動を打った。呼吸の仕方が何処かへ飛びかけて、あたしは義務のようにただ息を吸ったり吐いたりを繰り返す。
「絶対許さない」
そう言った彼の生ぬるい唇が首筋に触れ、おぞましさのあまり全身に鳥肌が立った。このままこいつの好きにされるなんて冗談じゃない。あたしは腹から大声を張り上げ、思いっきりもがいた。手足をばたつかせて叫んで、これでもかって彼の体を蹴ったが笑っちゃうぐらいビクともしない。
「だれかーーーーー！」
必死になって声を出したが、彼が振り上げた手に思わず怯む。また殴られるかと思いきや、彼はその大きな手であたしの口を覆った。
「これ男もんじゃん。もう次の男見つけたの？」
左手であたしのシャツを引っ張り、冷たい目であたしを見下ろす。
「どんな男？金持ってんの？」
篭った呻き声を上げれば、喋れないかと彼は笑った。歯を噛み締めたあたしは左右に視線を動かして、床に落ちていた写真立てに手を伸ばす。隙を突いて、あの写真立ての角で頭をブン殴ってやる。もし打ち所が悪かったら凄く血が出るかもしれない、最悪死ぬかもしれない。でも、今ここでこいつの思い通りになるのはもっともっと嫌だ。必死に指先に力を込めて、冷たいガラスに指が触れたのを確認して彼を見上げる。そして直ぐ、彼の視線があたしの手元にあった事に絶望した。
「俺のことそれで殴る？」
「……」
「お前ってそんなヤベー女だっけ」
答えを返せないでいると、写真立てを持った手を思い切り踏みつけられた。強い衝撃が神経を伝わって脳に伝達されたが、痛いと言おうにも口を押さえられているので叫べない。鈍い痛みと共に、みしみしと骨が鳴りあまりの激痛に自然に涙が出る。
「ごめん。でも、正当防衛でしょ？」
あんたの方がよっぽど怖いし、こんなの異常だ。こいつここまでやばかったか？と、あたしはただ自分に尋ねて、少しでも彼は"大丈夫"って思ってた自分を心の奥底から恨んだ。
「まぁそんなに戻って来たくないならいいけど。最後にもう一回ヤらせ、」
それを言い終える前に、彼の体はエグい角度に曲がって横に飛んで行った。突然の出来事に目を丸くしてる間に、彼は勢いよくベッドから落ちてそのままクローゼットの方へ突っ込む。物が沢山落ちる音や割れる音がして、あたしは瞼をきつく閉じ体を硬直させた。するとあたしの体がふんわりと浮く。驚いて薄く目を開ければ、蛍光灯に反射した彼の顔のラインがはっきりと見えた。
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匿名(プロフ) - 湯豆腐さん» とても嬉しいコメントありがとうございます^ ^ なかなか試行錯誤しておりますが、私なりの彼等を楽しんで頂ければと思います。お話いっぱいになり移行しましたので、次も末永く応援頂けると嬉しいです！ (2018年4月26日 21時) (
レス) id: 5ddf379a2d (このIDを非表示/違反報告)
匿名(プロフ) - 花恋さん» お返事大変遅くなりました。時間が空きながらの更新ですが、それでも楽しみにしてくれる方々にとても感謝しております。またお話増えましたので、お時間ある時にでもちらりと覗いてみて下さい^ ^ お待ちしてます。 (2018年4月26日 21時) (レス) id: 5ddf379a2d (このIDを非表示/違反報告)
匿名(プロフ) - なななさん» お返事大変遅くなり申し訳ないです。応援ありがとうございます！時間が出来また更新し始めたので、これからも気長に見守って頂ければ嬉しく思います^ ^ (2018年4月26日 21時) (レス) id: 5ddf379a2d (このIDを非表示/違反報告)
匿名(プロフ) - 夜星さん» お返事大変遅くなってしまいました。最近時間が出来たのでゆるゆると更新しております。暇な時にでも覗きに来ていただければ幸いです^ ^ (2018年4月26日 21時) (レス) id: 5ddf379a2d (このIDを非表示/違反報告)
湯豆腐(プロフ) - 匿名さんがかくジンくんとマホトくんが一番好きです。匿名さんも大好きです。これからも応援してます！ (2018年4月25日 19時) (レス) id: 65ae9a78b1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：匿名
| 作成日時：2017年7月10日 7時
