04.気の強い女 ページ4
SIDE.JIN
「すみません。この人ちょっとしつこい所あって」
俺を押し退けて話に割り込んで来たのは相馬トランジスタだ。発光する緑色に一瞬驚いた顔をした彼女だが、トランジスタが謝れば必然的に相手も一歩引く。
「深夜とか、なるべく音は気をつけますので」
「ああ…、お願いします」
「それじゃあ」
そう言って、トランジスタは半ば強引であろう感じの挨拶をして直ぐに扉を閉めた。そして俺の方を振り返る。
「もー、やめてよジン君」
本当に追い出されるからと溜息を吐いた彼に俺は顔をしかめた。
「別に俺しつこくねぇし」
「そう言わないと収まらないと思ったの」
「向こうの方がしつこいでしょ」
「でも悪いのは俺達だし、揉めたらこっちが退去させられちゃうよ?」
トランジスタの後を追ってリビングに戻って来た俺は、寝癖まみれでまだ眠そうにしてたマホトに尋ねた。
「上の階に女の子住んでたこと知ってたの?」
俺の質問にゆっくりと頷いたマホトは、何となくと頭を縦に振る。
「俺が挨拶行ったから」
「あれは絶対に性格悪いよ」
文句を言いつつ、顔は割と好きだけどと付け足せば「だと思ったよ」とトランジスタが首を突っ込んでくる。
「やたらと絡むと思った。ジン君ってあんな感じの性格キツい子好きだもんね」
呆れたように言ったトランジスタ。なんとなくバカにした口調だったが、あながち間違ってもいないので言い返しはしない。
「分かってないな。気の強い女っていいよ」
首を傾げるトランジスタを尻目に、手に取った煙草を口に咥えてライターで火を付ける。すうっと深く吸い込み、肺の中に主流煙を送り込んだ。
「気強いと言い合いになるし、喧嘩の元じゃん。何が良いの?」
「気が強いのが良いんじゃなくて、それが崩れた時を俺は見たいんだよ」
唇から吐いた副流煙をトランジスタの顔に吹きかければ、彼はううんと唸って煙を手で払う。
「…分からなくもないけど、ジン君に標的にされた女の子が可哀想だよね」
そう言ってマホトに同意を求めるトランジスタだが、重い瞬きを繰り返すマホトはそうは思わないと首を振った。
「ジンだって、好きな女の事は大事にするよ」
「まぁ…そうだけどさ」
未だに納得いかないような顔をするトランジスタに今一度大量の煙を吹き付けて、嫌がる彼の表情に俺はケラケラと笑った。
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匿名(プロフ) - 湯豆腐さん» とても嬉しいコメントありがとうございます^ ^ なかなか試行錯誤しておりますが、私なりの彼等を楽しんで頂ければと思います。お話いっぱいになり移行しましたので、次も末永く応援頂けると嬉しいです! (2018年4月26日 21時) (レス) id: 5ddf379a2d (このIDを非表示/違反報告)
匿名(プロフ) - 花恋さん» お返事大変遅くなりました。時間が空きながらの更新ですが、それでも楽しみにしてくれる方々にとても感謝しております。またお話増えましたので、お時間ある時にでもちらりと覗いてみて下さい^ ^ お待ちしてます。 (2018年4月26日 21時) (レス) id: 5ddf379a2d (このIDを非表示/違反報告)
匿名(プロフ) - なななさん» お返事大変遅くなり申し訳ないです。応援ありがとうございます!時間が出来また更新し始めたので、これからも気長に見守って頂ければ嬉しく思います^ ^ (2018年4月26日 21時) (レス) id: 5ddf379a2d (このIDを非表示/違反報告)
匿名(プロフ) - 夜星さん» お返事大変遅くなってしまいました。最近時間が出来たのでゆるゆると更新しております。暇な時にでも覗きに来ていただければ幸いです^ ^ (2018年4月26日 21時) (レス) id: 5ddf379a2d (このIDを非表示/違反報告)
湯豆腐(プロフ) - 匿名さんがかくジンくんとマホトくんが一番好きです。匿名さんも大好きです。これからも応援してます! (2018年4月25日 19時) (レス) id: 65ae9a78b1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:匿名 | 作成日時:2017年7月10日 7時