15.まだユメウツツ ページ15
「このクソ女！」
彼はどうやら、こんなに汚い言葉を易々と使う人だったらしい。そしてあたしはクソ女なのだそう。あまりにも馬鹿馬鹿しくて、あたしはもう考える事を殆どやめていた。彼の大声と共に、ひゅんと風をきるような音がしたと思う。時間が止まった感覚に襲われた瞬間、あたしは彼に頰をぶたれた。痛覚が頭に伝わる前に身体は床に飛び、あたしは固いコンクリの地面に腰を落とす。痛いよりも先に来るのは驚き。それはそれは、びっくりして少しの声も出なかった。
「お前何やってんだよ！」
咄嗟にこちらへ駆け寄ってきた金色の彼。”ジン君”に、よろめいた身体を支えられた。
「女だぞ！」
ジン君の怒号が廊下に響く。未だに理解できない状況、あまりのショックであたしは頭を上げれないでいた。
嘘でしょ。今、あたし、叩かれたの？それだけが脳みそをループしてる。それでも頰はジクジクして熱を帯びてきて、痛みを感じた途端にごわごわと込み上げてくるのは奇妙な感覚。”こんな人を好きだったのか”なんて、あれだけ好きだった彼が身に覚えのない人に見えてくる。
「…誰か知らないけど、あなたには関係ないっすよね」
「関係無いとかじゃなくて、女が殴られてたらフツー止めに入るでしょ」
「結構です。これは俺と彼女だけの話なんで」
「殴った時点で話は終わり。もうこの子は、絶対にお前のところには戻ってこねぇからな」
ジン君と彼とが頭上で口論しているのを何となく聞き流した。こちらにこようとした彼を強く睨むジン君。あたしを庇うように彼が前に立てば、知らない香水の匂いが鼻の奥に充満する。
「立てるか？いいから行くぞ」
そう促してあたしの腕を取ったジン君。それを見ていた彼が黙っているわけもなく、すぐに止めようとジン君の肩に触れた彼の手。ジン君はそれを思い切り振り払って言った。
「お前にはもう関係ねぇだろ」
その低い声は鼓膜の奥までズンと響き、心臓を冷たくさせる。だけど乱暴な言葉遣いとは裏腹にジン君のあたしに触れる手付きは緊張しているようにも感じた。
「そこ退け。帰るんだよ」
思わず黙り込む彼に背を向けて、ジン君はあたしの肩を抱く。まだ意味は分からないし頰は痛い、だが不思議と寂しさは微塵も無い。あたしは涙すら出ない彼との別れに、ゆっくりと瞼を閉じた。
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匿名(プロフ) - 湯豆腐さん» とても嬉しいコメントありがとうございます^ ^ なかなか試行錯誤しておりますが、私なりの彼等を楽しんで頂ければと思います。お話いっぱいになり移行しましたので、次も末永く応援頂けると嬉しいです！ (2018年4月26日 21時) (
レス) id: 5ddf379a2d (このIDを非表示/違反報告)
匿名(プロフ) - 花恋さん» お返事大変遅くなりました。時間が空きながらの更新ですが、それでも楽しみにしてくれる方々にとても感謝しております。またお話増えましたので、お時間ある時にでもちらりと覗いてみて下さい^ ^ お待ちしてます。 (2018年4月26日 21時) (レス) id: 5ddf379a2d (このIDを非表示/違反報告)
匿名(プロフ) - なななさん» お返事大変遅くなり申し訳ないです。応援ありがとうございます！時間が出来また更新し始めたので、これからも気長に見守って頂ければ嬉しく思います^ ^ (2018年4月26日 21時) (レス) id: 5ddf379a2d (このIDを非表示/違反報告)
匿名(プロフ) - 夜星さん» お返事大変遅くなってしまいました。最近時間が出来たのでゆるゆると更新しております。暇な時にでも覗きに来ていただければ幸いです^ ^ (2018年4月26日 21時) (レス) id: 5ddf379a2d (このIDを非表示/違反報告)
湯豆腐(プロフ) - 匿名さんがかくジンくんとマホトくんが一番好きです。匿名さんも大好きです。これからも応援してます！ (2018年4月25日 19時) (レス) id: 65ae9a78b1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：匿名
| 作成日時：2017年7月10日 7時
