既視感のある ページ48
【夢主目線】
「は、はーい。開いていますからお入り下さい。」
ノックした主に声を掛けた。
そうして素早く太宰さんが出て行った窓を閉めようと手を伸ばした。
世話役「失礼します。世話役して雇われた者です。」
そう言えば国木田さんが数時間後に世話係が来ると言っていた。
私は窓をピシャリと閉めると後ろを振り向いた。
(……男の人なんだ…。)
中栗「之から期間中、身の回りの世話をさせて頂きます。中栗太郎と申します。中栗でも世話役とでもお好きに御呼びください。」
彼もまた安吾の様な昭和じみた装いをしていた。
そうして目はクルリと大きくハッキリとした顔立ちで、両サイドの籾上はツンと上向きに撥ねていた。
「宜しく御願いします…中栗さん?国木田さんに雇われていらっしゃったのですか?」
中栗「まァそうですけど…此処だけの話、私が志願したんです。」
「……志願…したとは?」
中栗「先日、組合が横浜を壊滅状態に追いやったでしょう?あの真っ只中に怪我をした私を探偵社さんが保護してくれましてね。」
「……成程。」
中栗「そうして何か御礼は出来ないかと無理を言ったら、子供の世話は出来るかと言われたンです。」
「其れで此の仕事を。」
中栗「短い間ですが。成る可く不自由無く過ごせる様に尽くしますので。」
(良い人そう…。)
私はそっと胸を撫で下ろした。
最近は人間不信が末期を極めていて信用出来る人間が傍に居ることはとても安心するのだ。
中栗「早速ですが、今日の御夕飯を……」
「あ、中栗さんすみません…私…食が細くって…」
中栗「ですが何もお食べにならないのは身体に悪いと思いますが……。」
「何か、軽食みたいな物は有りますか…?私、今日は其れで十分です。」
初日からこんな我儘を言ってしまって大丈夫だろうかと躊躇したが、之が毎食、常人の一人前が出て来ては困る。
私が中栗さんの顔色を伺っていると、彼はあっと思い出した様に手提げの中を漁った。
そうして私の前にジップロックに入ったパンの様な物を置いた。
「こ、之は……?」
中栗「ピロシキというパンです。」
「ピロシキ……。」
中栗「ピロシキとは露西亜の伝統的な食べ物です。店先で売っているのを見て珍しさから私の夕飯にでもしようかと思い買ったのですが、是非どうぞ。」
「……え、いいんですか?夕飯なのに…。」
中栗「はい。お気になさらず。」
私は遠慮無く此のパンを貰う事にした。
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葵(プロフ) - 飽き性さん» ご丁寧なご指摘ありがとうございます(/Д`;応援ありがとうございます(^^♪頑張ります! (2018年8月1日 13時) (レス) id: 85af478746 (このIDを非表示/違反報告)
飽き性(プロフ) - 本編の方で福沢が福澤になってますよ。この小説大好きです!通知来る度うきうきしてます!無理せずこれからも更新頑張って下さい! (2018年7月31日 2時) (レス) id: 7dd1ea514d (このIDを非表示/違反報告)
葵(プロフ) - 雪奏さん» お気に召して頂けた様で大変嬉しく思います(^^♪どうか最後までお付き合い下さい(^ ^) (2018年7月25日 19時) (レス) id: 85af478746 (このIDを非表示/違反報告)
雪奏 - すごく面白いです!応援してます!壁|ョ・ω・`o)ガンバッテッ♪ (2018年7月22日 22時) (レス) id: edf769ece4 (このIDを非表示/違反報告)
葵(プロフ) - #祭鼓*@harigaya mako*さん» 応援のコメント大変嬉しく思います!最近仕事の方が激務を増して今して忙しいので更新が滞っていますがどうか最後まで読んで頂ければと思っております(^ ^) (2018年6月18日 23時) (レス) id: 85af478746 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:えりんぎそーまっち | 作成日時:2018年6月9日 18時