【文スト】選んで生まれた訳じゃない [第四章]

預け子 ページ35

【夢主目線】


先程から私一人だけが此の会話に付いていけていない。


“双方の利害”やら“共倒れ”等と云う言葉を聞いても全く状況が掴めていなかった。



そんな中、太宰さんと首領は私達が乗ってきた車で何処かへ行ってしまった。



(………どういう事……？私…捨てられたの？！)



私が右往左往していると手を握っていた探偵社の社長が手を握ったまま反対方向に歩き出した。



(……えっ？！……えっ！？……連れて行かれるの？ど、何処へ？……もしかして…………御託所？！)





私は半強制的に引かれていた其の手を振りほどいて一目散に駆け出した。

しかし社長は追って来ない様だ。



私は肉食獣から逃げる兎にでもなった気分で兎に角走った。


行く宛など無かったがあの儘連れて行かれて居たら御託所へ突き出され、法で裁かれ、実質上の監獄に入れられる事になる気がして私はひた走った。


暫く走ると大通りに出た。

洒落た喫茶処を通り過ぎて、ノスタルジックな陶器店をのショーウィンドウに映った自分は罪人宛らの面持ちで複雑な気持ちに見舞われた。



そうして今、古き良き時代の香りがする懐かしの駄菓子屋の前を通り過ぎようとした時に、何故か脚が前に振り上げられずに思いっ切り転がってしまった。


酷い醜態を晒したと顔を赤らめながら後ろを振り向くとそこには悠々と店先の長椅子に腰掛けてラムネを飲む者が居る。

しかも脚を歩道側に伸び々と伸ばす不届き者が！





此奴の脚に引っ掛かって転んだに違いない。

私は色を変えて咎めようと試みた。しかし今騒ぎを起こせば居場所がバレてしまう。



それだけは絶対に避けたかった。

私は高ぶる気持ちを鎮め、服を払って再び走り出そうとした。




？「────ごめーん。勿論、態とだけど。」




────！！


聞き覚えのある声がして後ろを振り向いた。

此の鼻につく様な、男にしては高めの声の正体は……。


奴は懐からあの探偵帽を出すと其れを深く被りニタリと笑った。




乱歩「泣かないなんて偉い偉ーい！僕が直々に褒めてあげよう。」


そしてラムネを飲み干すと勢い良く其の瓶を自らの横に置いた。



────ﾀﾞﾝｯｯ！！



私は其の何とも言い難い剣幕に押されて肩を震わせた。



乱歩「待ちくたびれて喉が乾いちゃった。でももう入れるからいいや。」


“もう入れる”……？


私が彼の言動に疑問を抱きだした次の瞬間。

肩にふわりと季節外れの雪が舞い落ちた。

華麗なる連携プレー→←衝突三秒前

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