衝突三秒前 ページ34
【目線なし】
太宰と森の間に只ならぬ空気が漂って関係の無いAにまで緊張が走った。
まるで衝突数秒前という張り詰めた空気を宥めるかのように福沢が其の口を開いた。
福沢「呉々も私欲の儘に動かぬ様にお願い申し上げたい。森先生。」
森「……勿論ですとも。但し太宰君が何か良からぬ事を企む様でしたら、此方も何か特策を行使せざるを得ないでしょうね。」
福沢「無論。太宰は其方に害を加えるような事は出来ません。違うか太宰。」
太宰「ええ、社長の仰る通り。但し例外は認めて頂きたい。」
福沢「なんだ。」
太宰「例えばマフィアの主砲とも言われる彼、然り赤毛の重力使いなる彼が、私に何らかの侮辱行為を働いた場合の反撃の許可を頂きたい。」
森「……ﾌﾌｯ…元相棒だけあって仲が良いね。承諾したよ。中原君には此方からよく言っておこう。」
福沢「太宰。仲違いなどしている暇はないぞ。」
森「福沢殿の仰る通り。太宰君には存分に実力を発揮してもらう必要があるからね。四年前の様に……。」
そこまで話し終わると太宰は無言でAが乗って来た黒塗り車に歩み出した。
其の背中に念を押す様に福沢は言った。
福沢「健闘を祈るぞ。太宰。」
すると、太宰は足を止めた。
春風が相変わらず無造作な彼の蓬髪を揺らして、茶色の外套の帯が緩く揺れた。
太宰「不本意ながら…………お任せ下さい。」
それだけ言い残すと太宰は一度も振り向く事無く黒塗り車両に乗り込んだ。
Aが不思議そうに太宰が乗り込んだ車両を見ていると森が彼女に優しく話し掛けた。
森「悪いが、詳しい事は彼に聞いてくれ給え。時間が少々差し迫っているからね。」
森はそう言って福沢を見詰めると自らの横に添うAの背中を福沢の前まで優しく押した。
一方のAはこの状況がまだ呑み込む事が出来ずにただ、視線をあちこちに散らすだけだった。
そうして森は福沢に一言。
森「宜しく頼みましたぞ、福沢殿。呉々も例の特約は……。」
福沢「社員にも深く言い聞かせてありますので、御心配無く。」
福沢がそう言ってAの掌を優しく掴んで引く。
森は静かに其れを見守るとゆっくりと元来た車に乗った。
車はエンジン音を庭園に響かせながら走り去って行った。
残されたAはただ呆然とし、風に揺れる福沢の銀髪を虚ろな眼で見つめるだけだった。
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葵(プロフ) - 飽き性さん» ご丁寧なご指摘ありがとうございます(/Д`;応援ありがとうございます(^^♪頑張ります！ (2018年8月1日 13時) (
レス) id: 85af478746 (このIDを非表示/違反報告)
飽き性(プロフ) - 本編の方で福沢が福澤になってますよ。この小説大好きです！通知来る度うきうきしてます！無理せずこれからも更新頑張って下さい！ (2018年7月31日 2時) (レス) id: 7dd1ea514d (このIDを非表示/違反報告)
葵(プロフ) - 雪奏さん» お気に召して頂けた様で大変嬉しく思います(^^♪どうか最後までお付き合い下さい(^ ^) (2018年7月25日 19時) (レス) id: 85af478746 (このIDを非表示/違反報告)
雪奏 - すごく面白いです！応援してます！壁|ｮ･ω･｀o)ｶﾞﾝﾊﾞｯﾃｯ♪ (2018年7月22日 22時) (レス) id: edf769ece4 (このIDを非表示/違反報告)
葵(プロフ) - #祭鼓*@harigaya mako*さん» 応援のコメント大変嬉しく思います！最近仕事の方が激務を増して今して忙しいので更新が滞っていますがどうか最後まで読んで頂ければと思っております(^ ^) (2018年6月18日 23時) (レス) id: 85af478746 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：えりんぎそーまっち | 作成日時：2018年6月9日 18時
