真実の鍵 ページ29
【夢主目線】
Q「其の異能力者についてもっと詳しい事は?」
「……えっと…。」
私は詠美の容姿を思い出そうと必死に頭を捻った。
容姿位なら出てくる筈…。
宇宙の様に果てしなく黒い艶のある髪。陶器のような白い肌。トパーズの如く混じりっけのない瞳。其の容姿に似合わない、燻し銀の如く落ち着いた茶色の外套を羽織り……。
いや、まだ何か…ある筈だ。見落としている何かが……。
すると次の瞬間、私の記憶の中にギラリと輝く物を見つけた。
────詠美の胸元に何時も掛かっていた。
“鍵”
「思い出した!鍵、鍵が首からネックレスみたいにしてかかってた。」
Q「其の鍵を使う箱かなんかに入っている筈。」
「…其の中身が異能の“根源”となる物。」
Q「そう!お姉ちゃんが此処から出たら其の鍵を奪って根源の在処を聞き出せば良いんだよ!」
“此処から出たら”この一言で私はすっかり現実に引き戻されてしまった。
身体の熱がそっと冷めた。
そうだった。今の私は見るも哀れな囚人の身であった。
Q「ごめん……傷付けちゃって。」
「ううん。大丈夫だよ。勝手に凹んでるだけだから。Q君のせいじゃないよ。」
夢野「…………夢野久作…。」
「……へ?」
夢野「僕の名前。お姉ちゃんは?」
私は思わず感動した。あれ程心を閉ざしていた彼が自分から其の名前を教えてくれたのだ。
私は歓喜に身を任せ自らの名前を口走ろうとした。
しかし、其れは叶わなかった。
「A………?あれ…いや、違う…………ソーニャ……」
“ソーニャ”だって……。
違う。そんな名前じゃない。だって私の名前は……。
────なんだっけ……?
思い出すんだ。自らの素性を…………。
私は此処ポートマフィアの参謀機関の四代目参謀長。
首領の名は森鴎外。
副首領は尾崎紅葉。
幹部は中原中也。
黒蜥蜴百人長の広津柳浪。
十人長の銀と、立原道造。
医務機関、主任の梶井基次郎。
全部…覚えているのに……。
名前が出て来ない。自分の名前だけが。
夢野「……じゃあ。ソーニャさんって呼べばいい?」
「………あ、……え、うん。」
何故だろうかこの名前は馴染み深い様な。
懐かしい様な。
────安心する様な。
夢野「……じゃあソーニャさん。僕、今日…もう眠いから…寝るね。」
カランと鉄格子に寄り掛かったまま夢野君は眠ってしまった。
私も妙な胸騒ぎに見舞われながら瞼を閉じた。
195人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
葵(プロフ) - 飽き性さん» ご丁寧なご指摘ありがとうございます(/Д`;応援ありがとうございます(^^♪頑張ります! (2018年8月1日 13時) (レス) id: 85af478746 (このIDを非表示/違反報告)
飽き性(プロフ) - 本編の方で福沢が福澤になってますよ。この小説大好きです!通知来る度うきうきしてます!無理せずこれからも更新頑張って下さい! (2018年7月31日 2時) (レス) id: 7dd1ea514d (このIDを非表示/違反報告)
葵(プロフ) - 雪奏さん» お気に召して頂けた様で大変嬉しく思います(^^♪どうか最後までお付き合い下さい(^ ^) (2018年7月25日 19時) (レス) id: 85af478746 (このIDを非表示/違反報告)
雪奏 - すごく面白いです!応援してます!壁|ョ・ω・`o)ガンバッテッ♪ (2018年7月22日 22時) (レス) id: edf769ece4 (このIDを非表示/違反報告)
葵(プロフ) - #祭鼓*@harigaya mako*さん» 応援のコメント大変嬉しく思います!最近仕事の方が激務を増して今して忙しいので更新が滞っていますがどうか最後まで読んで頂ければと思っております(^ ^) (2018年6月18日 23時) (レス) id: 85af478746 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:えりんぎそーまっち | 作成日時:2018年6月9日 18時