忌み子 ページ25
【夢主目線】
不意に私の手首を掴む力が弱まったので、私は其の子供の手を振り払って、腰を抜かした儘後ずさった。
矢張り恐怖心を煽られながら脅かされると心臓が飛び出る程に驚く。
そしてこの地下牢のなんとも言えない雰囲気が其れらをより一層引きたてるのだ。
「………あ、貴方は誰…なの……?」
喉奥からやっと力の抜けた情けない声が出た。
すると其の子供は自らの足元に転がっている気味の悪い人形を拾い上げてから言った。
?「──僕の名前?重役の人なのに知らないんだ。変わってるね。」
案外、狂気じみた表情を見せることなく私の様に鉄格子に寄り掛かった。
?「お姉ちゃんは何でここに来たの?何か失態とか?」
此処で冤罪だと子供に言っても分かりはしないだろう。
それにしても何故この子の存在を隠しておいたのだろう?
「……うんまあ。失態と言えば失態かな…。」
私は力なく失笑した。
?「そうなんだ。僕はね、お姉ちゃんが来る何年も前から此処に閉じ込められてるの。」
「……何故そんな事を…?」
Q「僕は皆からは“マフィアの忌み子”通称“Q”って呼ばれてるんだ。だから誰も外に出してくれない。」
この子は一人、自嘲的な笑みを浮かべて蹲った。
そんな背中に先程の自分と似通って哀れんだ。
「何故“忌み子”だなんて…。」
Q「僕の異能が厄だから。この異能は持てば皆から無慈悲に忌み嫌われる。」
其の子はおもむろに服の袖を捲った。
──────!!!
そこには包帯とともに無数の剃刀の刃が巻かれており所々から血を流していた。
私はいたたまれなくなり思わず視線を散らした。
Q「僕の異能は“ドグラ・マグラ”って言ってね。異能力の中では異端とされる精神操作の異能なんだ。」
[精神操作の異能]それは前に本で読んだことがあった。
人の精神を乱しコントロールする。時に其の異能は其の人格さえも狂わし自我を消し去る恐ろしい異能力。
再びこの子に対する恐怖心が芽生え唾を飲んだ。
Q「……僕が怖いでしょ…?怖いよね…。僕の異能は綺麗な幻想を見せられる訳でもないし力強い物理変幻的な能力でもない。」
次第にこの子から啜り泣く様な声が漏れ始めて泣いているという事を覚らせた。
Q「……僕の異能はただ人を狂わすだけ…。そんな僕は平穏に生きることすら許可されない…。」
────僕だってこの異能を
“選んで生まれた訳じゃない”のに。
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葵(プロフ) - 飽き性さん» ご丁寧なご指摘ありがとうございます(/Д`;応援ありがとうございます(^^♪頑張ります! (2018年8月1日 13時) (レス) id: 85af478746 (このIDを非表示/違反報告)
飽き性(プロフ) - 本編の方で福沢が福澤になってますよ。この小説大好きです!通知来る度うきうきしてます!無理せずこれからも更新頑張って下さい! (2018年7月31日 2時) (レス) id: 7dd1ea514d (このIDを非表示/違反報告)
葵(プロフ) - 雪奏さん» お気に召して頂けた様で大変嬉しく思います(^^♪どうか最後までお付き合い下さい(^ ^) (2018年7月25日 19時) (レス) id: 85af478746 (このIDを非表示/違反報告)
雪奏 - すごく面白いです!応援してます!壁|ョ・ω・`o)ガンバッテッ♪ (2018年7月22日 22時) (レス) id: edf769ece4 (このIDを非表示/違反報告)
葵(プロフ) - #祭鼓*@harigaya mako*さん» 応援のコメント大変嬉しく思います!最近仕事の方が激務を増して今して忙しいので更新が滞っていますがどうか最後まで読んで頂ければと思っております(^ ^) (2018年6月18日 23時) (レス) id: 85af478746 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:えりんぎそーまっち | 作成日時:2018年6月9日 18時