1話 双子の定義 ページ1
私達双子は、よく間違えられる。
一言で間違えられると言っても、容姿が瓜二つな訳ではない。むしろその点で間違えられた記憶は、片手で数える程度だ。幼い頃は多少そっくりだったかもしれないが、成長するにつれ「似ているね」と言われることも減った。
元より、私達は双子と言う関係の中でも二卵性のため、顔の特徴や身長、ましてや性格も殆ど似ているところがなかった。
唯一の共通点と言えば、同じ髪色をしていることくらいだろうか。私は特に気にした覚えはなかったが、私達を初めて見た人は誰もが髪色を見て「あ、兄弟なのか」と認識するらしい。つまり、こんな目立つ髪じゃなければまず間違いなく兄弟だとすら思われていないだろう。
正直、その感覚は心底納得出来る。私自身、双子だけれども似ていると思ったことは一度もない。意思の疎通が上手くいかない日などしょっちゅうで、些細なことでもいちいち揉める。
揉めると言うか、お互いが一歩も譲らずに自分の主張を述べ続けた挙げ句、先にどちらかが馬鹿らしくなり始めた時点で曖昧に終わるのが最近の一日の恒例行事にもなりつつある。
マイペース主義の私と超正論派な弟とでは、まるで分かりあえる気がしない。つい前日も、下らない話題で言いたい放題散々ぶつけ合った。
他にも、性格を除けば決定的な違いは顔だ。
こればかりは、自分の意志で直したくても直せるものではない。しかし、やはり少しくらいは傷付くもので。
「……弟君は、本当に可愛いらしい顔立ちをしているね」
「本当に。目鼻立ちも整っているから、将来は絶対美形になるね」
「でも、お姉ちゃんの方は……まあ、何と言うか普通だよね。でも、普通が一番とも言うし、全然いいと思うよ」
「そうそう。大きくなれば顔も変わるしね」
……この時当時小学生だった私は、十歳未満にして既に自身の立ち位置をそっと把握した。勿論ショックも大きかったが、家柄の都合上やって来た大人達には、その場でただ笑みを浮かべることしか出来なかった。
顔を含め容姿に関しては、弟は本当に恵まれていたのだと思う。その後成長するにつれ勉学の方でも才能を発揮していくが、彼は大抵のことなら全てをそつなくこなしていた。
つまり、結局私は何が言いたいのかと言うと。
……事実上私が『姉』のはずなのに、何故か弟の征十郎が『兄』で私が『妹』に見られることがどうしても納得出来ないのである。
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作者名:翡翠 | 作成日時:2019年5月26日 20時