9話 多忙中につき不在 ページ9
「あ、愛莉っち。早く座ってくださいっス」
黄瀬が爽やかな笑顔で言った。そうか、私は完全無視な方向なのね、なるほど。いや意味がわからんわ。
確かに席を使っていいとは言った。むしろ自分から提供した。でも、人の話くらい最後まで聞くのが常識だと思う。いくら私が可愛くないからって。
黄瀬や青峰や紫原ならまだしも、緑間や黒子にまで無視されたのは少し傷付いた。
すると、緑間が何かを察したように口を開く。
「俺達のクラスは、次体育で移動なのだよ」
「はい。なので、結構急いで食べないと間に合わないんです」
「……そ、そうですか」
「七瀬さん、席を譲っていただきありがとうございます」
「……いや、大したことじゃないから」
何も言っていないにも関わらず、ちゃんと弁明してくれるとは。しかもわざわざお礼まで。こういうところで人の性格が出るのかもしれない。
……ところで、もう薄々お気付きだろうか。
さっきから、私が全くと言っていいくらい一切触れていない奴がいる。そう、赤司だ。
いや、本当に、会って数分経っているのに今更だけど気が付いた。
赤司がいない。
普通に姿が見当たらない。別に黒子みたいに影が薄い訳ではないし、他の背の高い奴らのせいで隠れているだけかと思っていた。
でもいざ席に座っているメンバーを確認してみると、明らかに赤い髪の奴はいない。周囲も見渡すが、やむなく諦める。
とりあえず、さりげなく聞いてみた。
「そういえば、赤司はいないの?」
「ああ、征十郎先輩は、今日は色々と忙しいみたいでまた今度と言われました」
「ふーん……」
やっぱりお前が誘ったのか。しかも『また今度』って何?凄い引っ掛かるんだけどそこ。
またも私の中でイライラが蘇ってくる最中、漸く桃井が戻ってきた。
「ごめんねAちゃん。時間掛かっちゃって……って、テツ君!?」
「あ、どうも桃井さん」
近くに座っている黒子を見て、桃井の顔が一気に輝いた。その様子は何ともわかりやすい。
「え、テツ君達も一緒に食べるの?」
「違う。さつきは私と教室で食べる運命にあるから。強制連行」
「へ、ここで食べるんじゃなかったの……?」
「予定は常に変わるものだから」
早く誰かにこの溜まりに溜まった愚痴を聞いて貰いたかった。勿論、そんなことが話せるのは桃井しかいないから、申し訳ないけれど一緒に来て貰わないと困るのだ。私が。
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翡翠(プロフ) - 七奈那さん» コメントありがとうございます!返信が遅くなってしまい本当にごめんなさい!面白いといって頂けてとても嬉しいです。最近忙しくて全く更新できていませんが、早く続きを作るようがんばります! (2020年3月4日 0時) (レス) id: c98d4fab9f (このIDを非表示/違反報告)
七奈那(プロフ) - いいお話ですね。とても面白いです。早く続きが読みたいです!応援してます。完結するのが楽しみです (2020年2月11日 17時) (レス) id: 98ad0ce5fe (このIDを非表示/違反報告)
翡翠(プロフ) - 花音さん» コメントありがとうございます。この作品を読んでもらえてとても嬉しいです!最近更新できていなくて本当にごめんなさい。私も完結させたいので、また近いうちに更新できるよう頑張ります。引き続きよろしくお願いします。 (2019年11月6日 22時) (レス) id: c98d4fab9f (このIDを非表示/違反報告)
花音 - 作品読ませて頂きました。凄く面白いですね。もう更新なさらないのですか?できれば完結させて欲しいです。待ってます (2019年11月6日 21時) (レス) id: ac5c9fd8b6 (このIDを非表示/違反報告)
翡翠(プロフ) - 黛夕那(#・∀・#)さん» コメントありがとうございます!読んでもらえてとても嬉しいです!なるべく早く更新できるように頑張りますね! (2019年9月1日 11時) (レス) id: c98d4fab9f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:翡翠 | 作成日時:2018年12月23日 16時