8話 余計な心配は不要 ページ8
愛莉の後ろには、当然の如く彼等もくっついていた。そして私を見るなり『何でここにいるんだ』的な視線を浴びせてきた。
はい、願ってもいない出くわし方。こんなところで偶然の出会い繰り広げなくて良いです。結構です。むしろこっちから願い下げだ。
「七瀬先輩!奇遇ですね、こんなところで会うなんて」
「……そうだね」
そう言って、さも嬉しそうに愛莉は微笑んだ。思ってもいないことがよくペラペラと出てくるものだな、と半ば感心してしまう。
私の脳内で、愛莉は勝手に腹黒設定になっていた。つまり、自己中心的な女。普通に失礼極まりないと思う。思うけど、そうでも思い込んでいないと、私の入る隙間がなくなってしまうからだ。
この裏表なさそうなほんわかした性格がそっくりそのまま素だった場合、私は一体何になるのだろう。
「もしかして一人ですか?」
「……いや、さつき待ってる」
「桃井先輩ですか」
愛莉はそっか、と言う代わりにぽんっと手を叩いた。逆にここで私が「別に一人だけど、何?」などと答えたらどうなっていたのだろうか。
「さつきはどこに行ったんだよ?」
「購買にパン買いに行った」
横から聞いてきた青峰の問いに、上の空で返す。私は、どうやってこの場からいち早く逃げられるかだけを必死に考えていた。
「……それより、皆席を探してたんでしょ?だったらここ使いなよ。ちょうど七人分あるし」
こうなれば、こちらから無理やり口実をつけて離れよう作戦だ。でも、案の定愛莉は簡単に「ありがとうございます」とは言わなかった。
「そんな、悪いですよ。始めは七瀬先輩達が座っていたのに……」
「じゃあ、今から違う場所探すの?時間的に考えたら早くご飯食べないと遅れるよ。それに、全員で座るならもうここしか空いてないんじゃない?折角席提供してあげてるんだからさ」
……我ながら決まったと思う。
「そうですね……本当に、良いんですか?」
「うん」
だから何回もそう言っているじゃん。少しずつ苛つき始めた心を必死に鎮める。
「でも、先輩達はどうするんですか?」
「教室で食べるから。心配無用」
さっきからずっと思っていたが、何で彼女以外誰も口を挟まないんだろう。黄瀬とか真っ先に何か言ってきそうなのに。
そう思って愛莉の後ろを見る。そこには、早々にテーブルをくっつけていつでも弁当を広げられる状態の彼等がいた。
……え、何で?
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翡翠(プロフ) - 七奈那さん» コメントありがとうございます!返信が遅くなってしまい本当にごめんなさい!面白いといって頂けてとても嬉しいです。最近忙しくて全く更新できていませんが、早く続きを作るようがんばります! (2020年3月4日 0時) (レス) id: c98d4fab9f (このIDを非表示/違反報告)
七奈那(プロフ) - いいお話ですね。とても面白いです。早く続きが読みたいです!応援してます。完結するのが楽しみです (2020年2月11日 17時) (レス) id: 98ad0ce5fe (このIDを非表示/違反報告)
翡翠(プロフ) - 花音さん» コメントありがとうございます。この作品を読んでもらえてとても嬉しいです!最近更新できていなくて本当にごめんなさい。私も完結させたいので、また近いうちに更新できるよう頑張ります。引き続きよろしくお願いします。 (2019年11月6日 22時) (レス) id: c98d4fab9f (このIDを非表示/違反報告)
花音 - 作品読ませて頂きました。凄く面白いですね。もう更新なさらないのですか?できれば完結させて欲しいです。待ってます (2019年11月6日 21時) (レス) id: ac5c9fd8b6 (このIDを非表示/違反報告)
翡翠(プロフ) - 黛夕那(#・∀・#)さん» コメントありがとうございます!読んでもらえてとても嬉しいです!なるべく早く更新できるように頑張りますね! (2019年9月1日 11時) (レス) id: c98d4fab9f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:翡翠 | 作成日時:2018年12月23日 16時