3話 お邪魔虫は引っ込むべし ページ3
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桃井さつきは見ていた。
一見、仲良さそう(勝手に思っているだけ)に話す赤司とAを、体育館の外からこっそり覗き込むようにして見ていた。
その顔は、心なしか我が子の成長を見守る母親のようだ。
「……おいさつき、いい加減中に入ろうぜ」
「しっ、気付かれちゃうでしょ!」
はあ、と桃井の傍らでため息をつくのは、彼女の幼なじみの青峰大輝。けだるそうに欠伸をし、「俺も早くバスケしてーんだけど」などとぼやく。
桃井はムッと青峰を睨む。
「今いいところなの!関係ない青峰くんは引っ込んでてよ」
「関係あるだろ。てか、これ遅れたら俺らやばくねーか?さっき赤司が午後の練習二倍にするとか聞こえたけどよ……」
「まあ、大丈夫でしょ。まだ皆来てないし。それに、二倍にされて大変なのは青峰君だけだから。ギリギリセーフ!」
「完全にアウトだろーが」
青峰はまた一つ深いため息をついた。
桃井のこうした探索は、今に始まったことではない。少し前から、恐らく当の本人であるAが自身の気持ちに気付く前から、桃井は二人の成り行きを密かに見守ってきた。
勿論、『協力するから』と言おうとした時期もある。ただ、生憎とその時はまだ確信するような証拠が掴めていなかった。
それに話を切り出したところで、完全に否定されるか嫌がられるかの未来しか想像出来なかったため、桃井は何も言わずに応援しようと決めたのだ。
それからというもの、彼女に一番近い存在の青峰は始終振り回されっぱなしだった。どうにかして二人をくっつけたいと言う幼馴染みの執念に負けた今では、何だかんだ一番都合良く使われるようになっていた。
「俺は別に、
「関係あるよ!同じ部活の副主将とマネージャーだよ?いいよね、憧れる!」
「何がだよ。目の前でただイチャつかれても腹立つだけだろ」
「そんなことないもん!」
「大体、赤司が七瀬のこと好きかどうかもわかんねえし」
「そ、それはそうだけど……」
図星を指され、桃井は語尾を濁らせる。
実際問題、赤司の心理だけは桃井の情報網を持ってしてもわからなかった。普段からの癖も意識して見るようにしているのだが、何故か赤司には最終的に全てをはぐらかされる。
正直な話、彼の普段の態度からAへの好意的なものは感じられなかった。
「うーん、思ったより難しいなあ……」
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翡翠(プロフ) - 七奈那さん» コメントありがとうございます!返信が遅くなってしまい本当にごめんなさい!面白いといって頂けてとても嬉しいです。最近忙しくて全く更新できていませんが、早く続きを作るようがんばります! (2020年3月4日 0時) (レス) id: c98d4fab9f (このIDを非表示/違反報告)
七奈那(プロフ) - いいお話ですね。とても面白いです。早く続きが読みたいです!応援してます。完結するのが楽しみです (2020年2月11日 17時) (レス) id: 98ad0ce5fe (このIDを非表示/違反報告)
翡翠(プロフ) - 花音さん» コメントありがとうございます。この作品を読んでもらえてとても嬉しいです!最近更新できていなくて本当にごめんなさい。私も完結させたいので、また近いうちに更新できるよう頑張ります。引き続きよろしくお願いします。 (2019年11月6日 22時) (レス) id: c98d4fab9f (このIDを非表示/違反報告)
花音 - 作品読ませて頂きました。凄く面白いですね。もう更新なさらないのですか?できれば完結させて欲しいです。待ってます (2019年11月6日 21時) (レス) id: ac5c9fd8b6 (このIDを非表示/違反報告)
翡翠(プロフ) - 黛夕那(#・∀・#)さん» コメントありがとうございます!読んでもらえてとても嬉しいです!なるべく早く更新できるように頑張りますね! (2019年9月1日 11時) (レス) id: c98d4fab9f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:翡翠 | 作成日時:2018年12月23日 16時