19話 見せ合いっこ ページ19
自分の番号を確認したからと言って、特に感情が上下することはなかった。結局はお互いがお互いの番号を見せ合わないと始まらないのだ。
「皆引いたね。じゃあ、私が最後だね」
桃井が、迷いなく残り一つの割り箸を手に取った。まあ、それしか選択肢がないのだから迷いたいものも迷えないのだけど。
「どうする?一斉に番号見せる?」
何故そこまでテンションを上げられるのだろう、この親友は。
黙っていても仕方がないので、それでいいんじゃないと適当に賛成する。Aちゃんが言うならそうしようか!と謎めいた理由付きで桃井から可決が下された。
「せーので、皆数字を見せるんだよ。一人だけ見せないとかナシだからね?」
桃井は数人に疑惑の視線を向けた。
「わかったから、早くしようぜ」
青峰が桃井を急かす。数秒間を置いて告げられた「せーの」の合図と共に、私達は同時に自身の持つくじを目の前に差し出した。
ここで新たな問題が発覚した。
……数字が小さくて見えない。
決して私の目が極端に悪いとかではない。多分。現に、他の彼等も目を細めては瞬きを数回繰り返し、最終的に隣の者のくじを覗き込むようにして見せ合っていた。
私も、隣の桃井のくじを盗み見る。
割り箸の先端には、赤色のペンではっきりと『3』の数字が記されていた。
「あれ、私とAちゃん番号違ったね……。残念だなあ」
桃井も、あからさまに残念そうな口調で私の番号を見た後呟いた。恐らく、桃井の倍以上にくじの結果に絶望を覚えている自分がいる。よくよく考えてみれば、この時点で残る可能性が桃井を除く他の誰かに確定されてしまったのだ。正直もう誰でも良……くはない。
「他の皆はどうなったのかな?」
桃井の声につられ、私もその他の奴等の結果を見る。彼女がまず最初に聞いたのは、やはり彼等だった。
「青峰君達は、何番だったの?」
青峰と黒子の二人に声を掛けた。
二人は顔を見合わせた後、「さつきは何番なんだよ?」と案の定質問で返した。
「私?私は3番だったよ」
「そうか。俺は2番だ」
「僕は4番です」
見事に全員違うな。半ば感心している最中、真後ろから「黒子っち、今4番って言ったスか?」と妙に明るい声がした。
「黄瀬君」
黒子に4番かと確認すると言うことはつまり、彼も4番なのだろう。失礼だが、黄瀬とはむしろ離れて良かったと心底安堵している私がいた。
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翡翠(プロフ) - 七奈那さん» コメントありがとうございます!返信が遅くなってしまい本当にごめんなさい!面白いといって頂けてとても嬉しいです。最近忙しくて全く更新できていませんが、早く続きを作るようがんばります! (2020年3月4日 0時) (レス) id: c98d4fab9f (このIDを非表示/違反報告)
七奈那(プロフ) - いいお話ですね。とても面白いです。早く続きが読みたいです!応援してます。完結するのが楽しみです (2020年2月11日 17時) (レス) id: 98ad0ce5fe (このIDを非表示/違反報告)
翡翠(プロフ) - 花音さん» コメントありがとうございます。この作品を読んでもらえてとても嬉しいです!最近更新できていなくて本当にごめんなさい。私も完結させたいので、また近いうちに更新できるよう頑張ります。引き続きよろしくお願いします。 (2019年11月6日 22時) (レス) id: c98d4fab9f (このIDを非表示/違反報告)
花音 - 作品読ませて頂きました。凄く面白いですね。もう更新なさらないのですか?できれば完結させて欲しいです。待ってます (2019年11月6日 21時) (レス) id: ac5c9fd8b6 (このIDを非表示/違反報告)
翡翠(プロフ) - 黛夕那(#・∀・#)さん» コメントありがとうございます!読んでもらえてとても嬉しいです!なるべく早く更新できるように頑張りますね! (2019年9月1日 11時) (レス) id: c98d4fab9f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:翡翠 | 作成日時:2018年12月23日 16時