17話 絶対王政 ページ17
「……よし、全員揃ったか。じゃあ、荷物まとめてバスに乗るぞ」
結局私で最後だったらしく、若干申し訳ない気持ちになる。しかし、人から何を言われようが私は決して遅刻した訳ではないのだ。そこは理解して欲しい。
バスは既に門の前で待機していた。三年生、二年生の順にバスに乗車していく。基本席は自由だったが、私達の場合そうはいかない。
「……ねえ、皆。ちょっとこっちに集まってくれる?」
遂に桃井が行動を起こした。
既に乗ろうとしていた彼等は、揃って後ろを振り返る。私以外は詳細を全く知らないようで、不思議そうにしながらも言われた通りに従っていた。青峰辺りが、何となくこれからの展開を予想したのかわからないが僅かにげんなりした表情になった。
「何スか、桃っち?早くバス乗らないと、先輩達に怒られるっスよ」
「ごめんね、きーちゃん。すぐ終わるから」
桃井は一言断りを入れると、事前に用意しておいただろう何かをサッと取り出した。しかも、何故か自信満々に。
「……桃井、これは何だ?」
桃井が取り出したのは、先端に一つずつ数字が書かれた割り箸だった。計九本。
「見ての通りだよ、くじ引き用のくじ!」
「……くじ?」
「くじ引き……って、今からするのか?」
何を考えているんだ、と皆思い思いに桃井を見る。……うん、そりゃあそうなるわ。
ほぼ全員が、一瞬にして不満の色を見せた。特に男性陣は状況を把握出来ていない上、この場には不自然な物を見せられたため少なからず困惑していた。にも関わらず、桃井ははっきりと宣言した。
「今から、バスの席決めくじ引きを始めまーす」
「……は?」
こう宣言してしまった以上、もう後戻りすることは無理だ。私は真顔でそう悟った。
誰も何も言わないので、桃井は何故かはっとした表情で口を開いた。
「大丈夫、やり方は簡単だから!ここにあるくじを一人一つ引いて、同じ数字が書かれている人と隣同士で座って貰うよ」
「いや、それくらい知ってるわ」
青峰が華麗に指摘した。
「そこじゃなくて、何でわざわざくじで席決めるんだよ?どこでもいいだろ、バス乗ってる間だけなんだから」
「いいじゃん、別に。それにどこでもいいって言うなら、くじで決めても文句ないでしょ?」
桃井の有無を言わせない圧力に負け、私達は見事にくじ引きを行う運命になってしまった。
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翡翠(プロフ) - 七奈那さん» コメントありがとうございます!返信が遅くなってしまい本当にごめんなさい!面白いといって頂けてとても嬉しいです。最近忙しくて全く更新できていませんが、早く続きを作るようがんばります! (2020年3月4日 0時) (レス) id: c98d4fab9f (このIDを非表示/違反報告)
七奈那(プロフ) - いいお話ですね。とても面白いです。早く続きが読みたいです!応援してます。完結するのが楽しみです (2020年2月11日 17時) (レス) id: 98ad0ce5fe (このIDを非表示/違反報告)
翡翠(プロフ) - 花音さん» コメントありがとうございます。この作品を読んでもらえてとても嬉しいです!最近更新できていなくて本当にごめんなさい。私も完結させたいので、また近いうちに更新できるよう頑張ります。引き続きよろしくお願いします。 (2019年11月6日 22時) (レス) id: c98d4fab9f (このIDを非表示/違反報告)
花音 - 作品読ませて頂きました。凄く面白いですね。もう更新なさらないのですか?できれば完結させて欲しいです。待ってます (2019年11月6日 21時) (レス) id: ac5c9fd8b6 (このIDを非表示/違反報告)
翡翠(プロフ) - 黛夕那(#・∀・#)さん» コメントありがとうございます!読んでもらえてとても嬉しいです!なるべく早く更新できるように頑張りますね! (2019年9月1日 11時) (レス) id: c98d4fab9f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:翡翠 | 作成日時:2018年12月23日 16時