15話 私は反対 ページ15
翌日、朝。
私は、まだ寝ていたい気持ちを何とか抑えながら最悪の気分で目が覚めた。結局あの後桃井は、何とも非現実的な考えを提案してきたため私が一方的に電話を切る形になり終わった。
その提案と言うのが、まあ一般的な『くじ引きで決めよう』な訳だったのだけど。
普通あり得ない。これが男女別だったなら反論はしないが、男女混合でやるとか意味不明なことを言い出すものだから、そりゃあ怒るでしょ。
私は極論を言うと隣が誰であれ座れれば良い。窓側の席に。ただ、私の隣に決まった時の相手の絶望したような顔を見たくないだけ。ただそれだけの話。
桃井のような天然美少女が隣に来れば誰も文句は言うまい。でも、部員的には愛莉が隣の方が嬉しいだろうか。どちらにせよ、私は無理。むしろそれで揉めるなら私が堂々と一人で座ってやる。それが一番平和な解決策。
……などと勝手に考えながら、私は準備を整え母に「行って来ます」と声を掛ける。
「行ってらっしゃい。くれぐれも無理しないようにね」
「平気だよ、お母さん。私マネージャーだし」
そう?と少し心配そうに母は私を見つめる。言い忘れていたけど、私はここ数日間で風邪を引いた。別に熱も出ていないし本当に単なる風邪だけど、今も若干喉が痛い。
「ちゃんと風邪薬は持ってるから、心配しないで」
「わかってるわ。……大丈夫だと思うけど、体調管理はしっかりしなさいよ」
どこまでも心配性だな、うちの母親は。玄関のドアを開けながら、もう一度大丈夫だから、と努めて明るく言ってみせる。母はそれで安心したのか、軽く手を振ってくれた。
家を出てから、私は気持ち早歩きくらいのペースで通学路を歩いた。悠々と出てきたかのように思えるが、実は結構時間がやばい。大遅刻とまではいかないけど、何せ我等がバスケ部には時間に厳しい奴が少なくとも二人はいる。
歩きながら、ふと思った。本当にくじ引きで席を決めるのだろうか。さすがに三年生を強要する可能性はないから、二年生と愛莉を誘ってやるのだろう。やるとしても。私は反対だけど。
そうこう考えている間に、中学校に無事着いた。集合時刻三分前。ギリギリセーフだろう。
体育館前には、既にほとんどの者が集合していた。私もその後ろにいそいそと並ぶ。こういう時、普段存在感が薄い立ち回りで良かったななんて思ったりする。
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翡翠(プロフ) - 七奈那さん» コメントありがとうございます!返信が遅くなってしまい本当にごめんなさい!面白いといって頂けてとても嬉しいです。最近忙しくて全く更新できていませんが、早く続きを作るようがんばります! (2020年3月4日 0時) (レス) id: c98d4fab9f (このIDを非表示/違反報告)
七奈那(プロフ) - いいお話ですね。とても面白いです。早く続きが読みたいです!応援してます。完結するのが楽しみです (2020年2月11日 17時) (レス) id: 98ad0ce5fe (このIDを非表示/違反報告)
翡翠(プロフ) - 花音さん» コメントありがとうございます。この作品を読んでもらえてとても嬉しいです!最近更新できていなくて本当にごめんなさい。私も完結させたいので、また近いうちに更新できるよう頑張ります。引き続きよろしくお願いします。 (2019年11月6日 22時) (レス) id: c98d4fab9f (このIDを非表示/違反報告)
花音 - 作品読ませて頂きました。凄く面白いですね。もう更新なさらないのですか?できれば完結させて欲しいです。待ってます (2019年11月6日 21時) (レス) id: ac5c9fd8b6 (このIDを非表示/違反報告)
翡翠(プロフ) - 黛夕那(#・∀・#)さん» コメントありがとうございます!読んでもらえてとても嬉しいです!なるべく早く更新できるように頑張りますね! (2019年9月1日 11時) (レス) id: c98d4fab9f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:翡翠 | 作成日時:2018年12月23日 16時