13話 手料理禁止令 ページ13
実際のところ、桃井は自分の手料理の破壊力を理解していないのだろうか。
「そもそも、私達が作る必要はないと思うけど」
「そういう問題じゃないの!皆が疲れて練習から戻って来た時に、私達の料理で元気になって貰うんだよ。栄養があるものいっぱい作ってさ……」
「完全に危険な香りしかしないから駄目」
「誰だって失敗はするよ!それに、今度こそはテツ君に完食して貰えるよう頑張る!」
「多分一口で終了だと思うよ。しかも比較的少食な黒子にさつきの料理は刺激的過ぎる」
「酷いよAちゃん!私だってやれば出来るもん」
「あんたの場合やればやる程やばくなるからね。そこ自覚持って」
私が否定すればする程、桃井はムキになって反抗してくる。他の話題なら早々に私が折れて平和的解決が出来ているかもしれないが、こればかりは桃井が折れてくれないと困る。
すると、黙って聞いていた愛莉が口を挟んだ。
「結局桃井先輩は、料理が出来るんですか?」
「いや全く」
私が即座に返答した時、偶々練習中の黄瀬がこちらにやって来て「誰か、タオル持ってないっスか?」と聞いてきた。
「はいよ」
他二人共持っていなかったので、私は適当に未使用のタオルを黄瀬に投げる。
渡した後で私から受け取るのは不服だったかと思いつつ、「ちょうど良かった」と黄瀬に話し掛けた。
「何スか?」
「黄瀬ってさ、一回さつきの手料理食べたことあったよね」
途端、普段は爽やかな笑顔を振り撒いて尚
そのまま暫く思考停止したように動かずにいると、漸く恐る恐る口を開いた。その声は何かに怯えているように震えていた。
「……もしかして、また桃っちが料理作ったりするとか?」
「いや、聞いただけ。さつきは料理作らないから安心して」
「……なら、良いっスけど」
不安げな顔で桃井を盗み見た後、「……タオルありがとう」と言って戻っていった。
暫く私達の間に、沈黙と言う名の重い空気が漂う。おもむろに私は愛莉に言った。
「……さっきの黄瀬の反応で察したでしょ。だから、さつきに料理作らせちゃ駄目。合宿どころじゃなくなるから」
「わかりました」
素直に頷いてくれた。この時、初めて心が通じ合った気がする。
「むー、気合い入ってたのに……」
桃井が私の隣で嘆きにも聞こえるような独り言を呟いた。
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翡翠(プロフ) - 七奈那さん» コメントありがとうございます!返信が遅くなってしまい本当にごめんなさい!面白いといって頂けてとても嬉しいです。最近忙しくて全く更新できていませんが、早く続きを作るようがんばります! (2020年3月4日 0時) (レス) id: c98d4fab9f (このIDを非表示/違反報告)
七奈那(プロフ) - いいお話ですね。とても面白いです。早く続きが読みたいです!応援してます。完結するのが楽しみです (2020年2月11日 17時) (レス) id: 98ad0ce5fe (このIDを非表示/違反報告)
翡翠(プロフ) - 花音さん» コメントありがとうございます。この作品を読んでもらえてとても嬉しいです!最近更新できていなくて本当にごめんなさい。私も完結させたいので、また近いうちに更新できるよう頑張ります。引き続きよろしくお願いします。 (2019年11月6日 22時) (レス) id: c98d4fab9f (このIDを非表示/違反報告)
花音 - 作品読ませて頂きました。凄く面白いですね。もう更新なさらないのですか?できれば完結させて欲しいです。待ってます (2019年11月6日 21時) (レス) id: ac5c9fd8b6 (このIDを非表示/違反報告)
翡翠(プロフ) - 黛夕那(#・∀・#)さん» コメントありがとうございます!読んでもらえてとても嬉しいです!なるべく早く更新できるように頑張りますね! (2019年9月1日 11時) (レス) id: c98d4fab9f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:翡翠 | 作成日時:2018年12月23日 16時