5話 一緒に来て ページ6
桐島先生は「じゃあ」と一息付くと、椅子から腰を浮かした。
「一緒に教室まで行きましょうか。もうホームルームも始まっている時間ですからね」
「！」
お兄さんとはここでお別れですね、と言いながらさっさと準備をする先生を見て、途端に私は顔色が悪くなるのを感じた。
先生一人相手ならまだしも、大勢の場に行くとなると再び不安が押し寄せる。それに、転入生には全員の前で挨拶をしなければならないと言う、無理難題な壁が立ちはだかっているのだ。
「い、イヤ。行かない……！」
凌介の服を引っ張り行きたくないとひたすら意思表示をする。
「大丈夫だから。ほら、先生について行って」
「イヤ！」
「A」
「いや……！」
追い詰められると自然と涙が出てしまう。昔からそうだった。十四歳にもなって、見苦しいことだとは重々承知だ。
「凌兄もついて来て」
「俺は、さすがにここまでだよ」
「イヤだ、一緒に来て！」
小さい子供のように駄々をこねる。凌介は、先生の方を困惑したように振り返った。
「……すみません、迷惑かけて」
「いえ、大丈夫ですよ」
凌介は、眼鏡をグッと押し上げた。落ち着かない時によくやる、彼の癖だった。
「……A」
「無理。無理無理無理。絶対無理！」
「……どうしたら良いですか？」
凌介は、救いを求めるような目で先生を見た。先生は軽く首を捻った後、急に「あっ」と手を打った。
「宜しければ、お兄さんも一緒に教室までついて来られてはどうですか？」
「……え？」
私達の声が見事に重なった。しかし、私の場合は救いの女神が降りてきたことへの歓喜、凌介の場合はまさかの先生の発言に対しての驚きだろう。
案の定、凌介は渋っていた。
「えっと、その……良いんですか？色々邪魔になったりとかすると思うんですが」
「まあ、初日ですしね。その辺は配慮することにしましょうか」
そう言って桐島先生は笑った。そして視線を私に向け、目配せする。
「それなら良いでしょ？Aさん」
「……は、い」
微かに、私は頷いた。
「凌兄は今日予定何もないんだよね？」
「……まあ、一応暇だけど」
「じゃあ、一緒について来てね」
離さないと言う代わりに、ぎゅっと私は凌介の手を握った。それもかなり強く。
「ええ……」
凌介は「何でこんなことになったんだ？」と一人戸惑いを隠し切れなかった。
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翡翠(プロフ) - モトコさん» ありがとうございます。がんばって更新します！ (2018年11月3日 23時) (
レス) id: c98d4fab9f (このIDを非表示/違反報告)
モトコ(プロフ) - 続きが気になります。更新頑張ってください！ (2018年11月3日 23時) (レス) id: e294c9830f (このIDを非表示/違反報告)
翡翠(プロフ) - ゆっくりノワールクローンNo.1さん» ありがとうございます！これからももっと面白くしていきたいと思います！頑張りますね！ (2018年8月14日 23時) (レス) id: c98d4fab9f (このIDを非表示/違反報告)
ゆっくりノワールクローンNo.1(プロフ) - ものっそい好みの作品です！！夢主ちゃん世間知らずで可愛いし間接キス知らないとかもう悶えちゃいます！！これからも更新頑張ってください！！ (2018年8月14日 20時) (レス) id: a2e5a81f28 (このIDを非表示/違反報告)
翡翠(プロフ) - 彩香さん» ありがとうございます(*≧∀≦*)!!がんばりますね！ (2018年8月1日 9時) (レス) id: c98d4fab9f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：翡翠 | 作成日時：2018年7月12日 19時
