16話 高嶺の花の姉、登場 ページ17
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……結局、私は午後まで爆睡した。赤司が気を使ってくれたのか、何故か先生は私が教室に戻ってきた時も、特に何も言わなかった。てっきり怒られるかと思ったが。
ともあれ、初日から既に他人に迷惑を掛けてしまう羽目になってしまった。隣で鞄に荷物を詰めている彼に、小声でお礼を言う。
「……あ、ありがとう、ございます」
「良いよ、別に」
彼とは、ほんの少しだけ会話が出来るようになった。本当に、少しだけ。そもそも、きっかけが教室から逃げる為に盾にしたって言う最悪な展開だったけれど。
「それにしても、見事に一日サボりだったね」
「なっ……べ、べべ別に、サボりって言うか……」
実際サボり以外の何者でもないが。
*
赤司との会話もそこそこに、そそくさと昇降口を出る。すると、何やら門の前に人だかりが出来ていた。限界まで背伸びをして、人だかりの真ん中を覗き見る。
「?……あ」
人だかりの先に見えたのは、今や何回と見慣れた車。その前には、見知った顔の人物が一人。その人物は今更言うまでもない。
「あーちゃん……」
「あら、A。早かったわね」
───姉の朱音だった。
朱音は、制服姿で門の前に立っていた。自身も学校帰りなのだろう。門の脇を通る生徒の大半は、男女関係なく彼女を見ては「綺麗な人だけど……誰?」と囁いていた。
唐突だが、私が姉のことを「あーちゃん」と呼ぶのは幼い頃からの癖なので、初対面の人には姉妹に思われないことがしばしばあった。顔も全く似ていないせいもあるだろうが。
「あーちゃん!」
周りが人で囲まれていることも忘れ、私は朱音めがけて勢いよく抱き着いた。
「わっ……どうしたの、A」
姉の切れ長の目が、若干心配そうにこちらを見てきた。私はとにかく家族に会えたことが嬉しくて、暫く言葉を発しないまま朱音に抱き着いていた。
「学校はどうだったの?」
「……んー」
「……その様子じゃ、微妙だったのね?」
流石に姉は鋭い。
「ちょっと……」
「まあ良いわ。続きは車の中で聞いてあげる。じゃあ、家に帰りましょう」
「うん」
朱音が手を差し伸べたので、素直に握った。やはり安心する。多くの生徒に見守られながら、私達は帝光中学校を後にした。
……翌日以降、何故かこの送迎の件についての噂が瞬く間に広がり、生徒の間でちょっとした騒ぎの種になるのだが、この時の私にはまだ知る由もない。
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翡翠(プロフ) - モトコさん» ありがとうございます。がんばって更新します! (2018年11月3日 23時) (レス) id: c98d4fab9f (このIDを非表示/違反報告)
モトコ(プロフ) - 続きが気になります。更新頑張ってください! (2018年11月3日 23時) (レス) id: e294c9830f (このIDを非表示/違反報告)
翡翠(プロフ) - ゆっくりノワールクローンNo.1さん» ありがとうございます!これからももっと面白くしていきたいと思います!頑張りますね! (2018年8月14日 23時) (レス) id: c98d4fab9f (このIDを非表示/違反報告)
ゆっくりノワールクローンNo.1(プロフ) - ものっそい好みの作品です!!夢主ちゃん世間知らずで可愛いし間接キス知らないとかもう悶えちゃいます!!これからも更新頑張ってください!! (2018年8月14日 20時) (レス) id: a2e5a81f28 (このIDを非表示/違反報告)
翡翠(プロフ) - 彩香さん» ありがとうございます(*≧∀≦*)!!がんばりますね! (2018年8月1日 9時) (レス) id: c98d4fab9f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:翡翠 | 作成日時:2018年7月12日 19時