clever and smart 2

番外編 talking ページ25

こうちゃんside

Aさんは俺の話をよく聞いてくれる。俺のお姉ちゃんだ。

自分のことは多くは語らないが、人の話にはちゃんと耳を傾ける。

口下手だけど、聞き上手。

今日も俺のくだらない話から小さな悩みまで、笑ってくれたり、短くとも的確なアドバイスをくれたりして、とても安心感を覚えながら話をした。

「俺高校時代全然友達いなかったんですよねー」
「あたしもだよ。あんまりクラスメイトとかと話合わなかったな〜。」
「そうなんですよ！みんな勉強ばっかりで、趣味の話とか全然しないんですよ！」
「うんうん。でも、意外と趣味と勉強を両立させてる人の方が志望校受かるんだよね。」
「マジでそうです。息抜きの方法とか身につきますよね。」

こうやって自然に会話をしているが、Aさんが相槌をうつことが上手いおかげだと思う。

ていうかQuizKnockのみんなは、人の話をよく聞いてくれる。

みんな人の好きなものを否定しないし関心を持ってくれる。

その中でも特に、Aさんは話している相手を気持ちよくさせる言葉を言うのが上手い。

そう思い、ふと彼女に言ってみた。

「Aさんて、超聞き上手じゃないですか？」
「そうかな。」
「はい、いつもみんなと会話がちゃんと弾むじゃないですか。」
「あー、あたしは自分の話をするのが苦手だから相手に喋っててもらう方が好きなんだよね。」
「なるほど…」
「それにほら、自分が喋るのが下手なら相手が喋りやすくなるような相槌が必要でしょ？つまりそのスキルがあれば自分語りが好きな指名客がどんどんつくんだよ。そしたらお金になるじゃん。」

一瞬なんの話？と思ったけどすぐ合点がいった。

Aさんはお酒の店の姉ちゃんだったのだ。

つまり相槌こそが金。

「夜のお店で働くのに喋るの下手ってかなり致命的でしょ。だからお金のために短所を伸ばすより長所を武器にすることにした。その癖が今でもあるんだと思う。」
「たくましいですね…」

過去イチで自分について話してくれたけど、まさかそれが「夜の店で培ったスキル」の話だと、誰が想像つくだろうか。

でもまぁ、またひとつAさんを知ることができたわけだし、いいか。

俺もこの調子でAさんのことたくさん聞き出していこう。

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