彼岸柱、魔法学園の常識を覆す -1-

第四十二の刃 ページ42

意地でも使わせる気なんか学園長…。
そして女の子の部屋に入るなよ勝手に。



『…でもなぁ。』



鬼との戦いで、体の一部を失った人もいる。
一生消えない傷を負う人だっている。
それに比べたら、私なんて可愛いもんじゃないか？



傷は一緒残ると決まったわけじゃない。毒による副作用だって、たまにしかならない。それに死ぬわけじゃないし。私だけが良い思いをするのは…。



そもそも毒を体内に入れたのは、私自身。もしも私が鬼に喰われても、鬼を殺せるようにするため。
つまりこの毒は…超高濃度な藤の花の毒。



でも、傷も毒もいずれバレる。今日だってタルト作り中、全く袖をめくろうとしない私に、トレイ先輩は違和感を覚えたはず。みんなに心配や迷惑をかけるのだけは避けたいし……。



『…あ。』



そう言えば蝶屋敷で診察を受ける時に、いつもしのぶちゃんが謝ってたな。「自分の薬学知識が乏しいせいで、思ったように治せない」って。しのぶちゃんは何も悪くないのに。






悪いのは…“あいつ”なのに。






毒だって、鬼に枷を加えるはずのものが、自分に加えてたら本末転倒。それこそ喰われる。



『こんな簡単なことに気づかないなんて…頭の中、ばあちゃんになっちったか。』



はは、と苦笑いを浮かべて瓶を手に取った。








ー大正コソコソ噂話ー

Aちゃんは過去に一度だけ、しのぶさんに稀血かどうかを調べるために血を摂取していました。

だけどその時はまだ体内に毒が入ってなかったため、バレることはありませんでした。

Aちゃんは剣士の才に恵まれていた為、隊士となってから血を流したことも傷をつくったことも一度もありません。

では、なぜ両腕両足、お腹辺りに多数の傷があったのでしょう…？

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