恋愛スピリッツ

とお ページ10

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:Ren





【人気モデル アユミ 突然の電撃引退】






そしてある日突然
｢アユミ｣は姿を消した。





大学受験を控えた年の秋頃だっただろうか。






『えー、既に知っているとは思うが、渡辺は
一身上の都合で引っ越すことになった』






芸能界からも、俺らの目の前からも

跡形もなく、忽然と、消えた。






『今日学校に事務所から連絡があってな、』

『職業柄、事前に伝えられなかったそうだ。
許してやってくれよ』







今朝大々的に取り上げていた朝の報道番組が

帰りのHRでの担任の言葉が

何度も繰り返しこだまする。






『なんで……』

『、紫耀…』

『……俺らにも、何ひとつ伝えてくれないんやな』

『……』





ビルの大型ビジョンに映し出された
夕方のワイドショーをじっと見据えながら

表情も変えずに彼は言った。





『……おかしいな、俺。』

『"モデルを頑張るアユが好き"って……
本当に思ってたはずなのに』






液晶では胡散臭い評論家やら
報道番組に進出したらしい芸人が

こぞって憶測に過ぎない自論を
さも事実かのように膨らませている。






『芸能界って……何が楽しいんやろな』







そう独り言のように呟いた彼に

俺は何も言えなかった







＊







それから数日は彼女の話題で持ち切りで




《CMなど沢山の出演を予定されていたようですが……》

《多額の違約金も発生すると予想されます》





違約金やら何やら

たかが高校生に過ぎない彼女に重荷すぎる代償を

でかでかと表記されたテロップ





学校にいても街を歩いても

どこにいても彼女がこびりついていた


どこにも彼女は居ないのに





.






.






『紫耀くん！帰ろ？』

『……うん、』





そして紫耀は彼女に似た女の子に
彼女の面影を重ねるようになった





＊＊＊

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