【鬼滅の刃】ねぇ、守れたよ【肆】

【佰肆】引退。 ページ4

※【佰弐】現状確認。
にて、柱全員(姫柱)を除く前辺りの時系列です。

※この時はまだ目覚めたばかりで、まともに動けるようになるまで結構かかりました。


□□□□
夢主side

し｢著しい内臓の損傷、身体を蝕んだ猛毒、右目の失明、奥義の使用による代償、そして腹部の貫通……。
杏華さん、｣



貴方は今後一切、呼吸を使えないと考えてください



耳に響いた声は、何処までも沈痛で｡
ある意味潔く納得したのと同時に、ストンと胃の腑が落ちた気がしたのだ。

……あぁ、やっぱり。

何処か、確信はしていたのだ。

病み上がり云々より、癖で常中を使った際ズキリとひび割れたように痛んだ肺も。
湯呑みより重い物は持てず、花瓶を持った際するりと手をすり抜けたそれを。

私は、いつから気付いていたのだろうか。

その兆しは、確かにあった筈なのに。

…元より、薄々勘づいてはいたのだ。

地獄咲きを使った時、内側から焼け焦げていく内臓と共に肺がジリジリと焼き付いていくのを。
あの時の私は、確かに感じていた。

それを使えば、良くて肺がダメになる。

確信はあった筈なのに、見て見ぬふりをしていた。

……何でって？そりゃあ…。



杏寿郎と共にまた方を並べあって柱として生きるこの先(未来)を、確かに渇望していたからだ。

『…そっか』

発したそれは、言葉として機能していたのだろうか。
カラカラに寂れた喉のように、干からびていたから。

……呼吸が使えない、その言葉が示すそれは……。

『…つまり、私は引退って事だね』

し｢…察しが良くて助かりますよ｣



柱としての引退を意味する。




……当たり前だろう。
腹の貫通に火傷、そして内臓や肺の損傷……寧ろいきているのが不思議なくらいだ。
ギシ、と椅子を後方に揺らし両手を頭の後ろに置いた。

『……まぁ、そりゃそうか。
…………、いやぁ、結構柱歴長かったよなぁ私〜！
悲鳴嶼さんに近い感じか大体…ねぇしのぶ、これって結構凄くない？』

し｢杏華さん｣

『んぁ？……って、うぉ』

ふわり、花の匂いが香る。
背中に回された細くて白い手は、紛れもなく普通の女の子に物だった。
肩口から見える窓の向こうに、蝶が舞う。

『し、のぶ し｢杏華さん｣』

『…！』

し｢生きていてくれて、本当にありがとう｣

『……勿論さ、大事な親友の為ならね』


耳の横で聞こえるか細い嗚咽は、聞こえない振りをした。

【佰伍】乱入者。→←【花言葉】

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す