【鬼滅の刃】ねぇ、守れたよ【肆】

【佰拾壱】前世の記憶。 ページ11

side無し

煉獄杏華は、もう柱では無い。

稀有な髪色と瞳を持った、家族思いの優しい女性だ。
千寿郎と駆け付けて来た杏寿郎を纏めて抱き締めている事から、その優しさが容易に分かる事だろう。

……そういえば、不思議に思った事は無いか？

彼女が、何故こんなに【弟】という存在に執着するのか。

弟の為なら、弟の為に。
弟が生きるなら、弟が居るなら。
私は、命だって投げ捨ててやる。
元より、この世界に覚悟を持つ者は多い。

それは姉の影を追う者だったり、兄への贖罪を求める者だったりと様々である。

しかし、彼女のそれは最早異常な物である。

まるで、弟を守る為だけに生きているように。

百年後の世界の言葉でメンヘラ、ヤンデレと言われても仕方の無いそれ。
しかし、それはちゃんとした理由があった。
深層心理まで深く根付いている、最早強迫観念にも似たそれ。

世界を跨いでも、欠片たりとも消えることの無かった深い信念。



そう、彼女の前世の記憶だ。



全ては、弟を守る為。

今こそ、語らねばならないだろう。

彼女の決意を、彼女の贖罪を。

・
・
・
・
・
・
・


【閑話休題】

夢主side

……え？私の前世の記憶？

…君もおかしな事を聞くねぇ。
そもそも、なんで私が転生者である事を知って……いや、やめておこう、これ以上は薮蛇だ。

君も物好きだねぇ、こんな私の前世を知りたいだなんて。

言っとくけど私はほとんど記憶なんて持ってな……いや、折角訪れてくれたんだ。

そこら辺は頑張って善処しよう。
…分かった、分かったからそんなワクワクしたような表情を浮かべるな。
ここの時間は"無限"だ、幾らでも思い出せよう。

……んー、そうだなぁ…。

まず何から思い出そうか……。

あ、そうだ！私が昔Gを捕まえた話でも……え？いらない？そっかぁ…(残念そうな顔)

ん、んん…ッ。

気を取り直して……。
君は何か話して欲しい事はあるかい？何せ"此処に来たのは君が初めて"でねぇ、こういうのは初めてなんだ。

そもそも私は外の世界に出られな……おっと失礼、失言だったな。
忘れておくれ。

……なら、私の幼い頃の話でもしようか。

はは、そんなに慌てるんじゃない。
私は逃げないし、逃げれもしないさ。
ゆっくり語らせて貰おう。



そうだなぁ…あれは確か、まだ齢一桁の頃……。

【佰拾弐】思ひ出の残滓。→←【佰拾】家での一時。

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す