4話 ページ5
「AA…だったか?」
「はい」
「愛しの我が娘エマをよくぞ救ってくれた。そこでだ、君は怨霊が見えるそうだな?」
「…はい」
学園長室。エマを送り届けた後、私は雷堂と横に並んで学園長と少し話をしていた。
「怨霊が見える、その特徴を活かしてYSPクラブに入部しないか。見える者も現状ひと握りしか居らん」
「…え?」
「はぁ?」
突然の提案に阿呆らしい返事をする。
「ち、ちょっと待ってくれ学園長、Aは怨霊が見えるだけで能力者じゃねぇ」
「見える者も人材として欲しいところじゃないか?今のYSPクラブは」
「…っそれは……」
二人の会話を聞いているだけでわかる、YSPクラブの人手不足と私のような「見える者」の貴重性。意を決したように私は口を開いた。
「学園長、入部届はいつ手配出来ますか」
「おお!入部してくれるか!」
「おいちょっと待て!」
私の入部宣言に歓喜の声を上げる学園長と、異議を唱える雷堂。私は雷堂に向き直った。
「雷堂くん、私は他の人の役に立ちたい。そのためだったら、私なんでも出来るの。私は皆より非力で役に立たないかもしれないけど、それでも頑張るから…!」
雷堂は黙って目をそらす。無理を言ったのは分かっていた。だが、見える私を初めて暖かく迎え入れてくれた彼の役にどうしても立ちたかった。
私は明日から、YSPクラブの一員だ。
「雷堂くん…その…無理を言ってしまってごめんなさい」
「…いや」
親しくなってから一緒に帰るようになっていたが、今日はいつもの帰り道ではないような気がした。
「なんで、私が入部することを反対したの?」
純粋に聞いてみた。雷堂は私に向き直って口を開く。
「Aが、心配なんだ」
「…」
「現状、見えるだけの人間でもいてくれるとありがてぇ。だけど、相手は人間じゃねぇんだ。いつ何処で何が起こるか誰も予想出来ねぇところにお前を置いておけない」
今の雷堂は、傷ついたような顔になっていた。
「心配してくれてありがとう…でも私は大丈夫だよ。雷堂くんが守ってくれるんでしょ?」
あはは、と笑って見せる。
「あぁ、お前は俺が絶対に守ってやる」
「う、うん」
八割方冗談のつもりだったのだが。
『メラ先輩、ずーっとA先輩の話しかしないんですよ。先輩のこと好きなんですかね?』
__まただ。姫川に言われた言葉が脳裏にこだまする。
何故こんなにも雷堂の事を意識してしまうのだろう。
それを知るのは今じゃなくていい。

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ウエサマ(プロフ) - キリノ様〜続きを書いてくだせ〜 (2022年7月13日 18時) (レス) @page42 id: 1442eac3b7 (このIDを非表示/違反報告)
キリノ(プロフ) - コメントが付いた…だと!?花音さん、ありがとうございます!そう言っていただけると励みになります♪これからもゆったり更新していく予定なのでよろしくお願いします! (2021年3月2日 21時) (レス) id: fda9b97bde (このIDを非表示/違反報告)
花音 - 初めまして♪凄く面白かったです( ≧∀≦)ノメラちゃんったら皆がいるかもなのに大胆(*/□\*)続きがとても気になります( ;`Д´)これからも応援してます(^○^) (2021年3月2日 20時) (レス) id: c9954f1e86 (このIDを非表示/違反報告)
キリノ(プロフ) - 感想などこちらにお寄せください!出来る限り返答します! (2021年1月13日 8時) (レス) id: fda9b97bde (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:キリノ | 作成日時:2020年12月30日 12時