第一話 ページ2
あまりの急展開に硬直していると、ぽん、と肩を軽く叩かれた。
はっと我に返り相手の方を見ると、困った様な、呆れたような顔をしている。そのまままた何かを言ったが、やっぱり僕には聞き取れなかった。
ただ、人差し指で仕切りに自分の口元を示しているので…たぶん、自分の言葉がわかるか聞いているんだろう。
ブンブンと首を横に振ると、深いため息を吐いて、くるりと踵を返す。ちょっと離れたとこで立ち止まってこっちを振り向いて、今度はついてこいと言うジェスチャーをした。
素直にそのガタイのいい背中を追いかけていると、やがて森が開けて、白い石の高い壁が見えてくる。
…お城、と言うより、要塞？何の建物なのかはわからないが、遠くで数十人の揃った掛け声と、物々しい空気を感じ取れる。それにお城にしては絵本なんかでよく見る様なとんがった塔もないし。
というか、このひとの着てる服も軍服っぽいし…此処、もしかして、軍基地？
そう思うと途端に足が竦んだ。え、僕殺されるの？
アーチ状の門のところで蹈鞴を踏んでいると、不意に僕を連れてきた人が立ち止まって振り向く。
『何や、どうした？』
「あっ、ご、ごめんなさい！」
弾かれた様に駆け出して、ぴったり相手の後ろにくっついて回る。
豚のひとは何となく迷惑そうな顔をしていたけど、今は1人になるのがとにかく怖かったし、不安だった。
2人で沈黙を纏いながら歩いていると、やがて建物の中に入り、赤いカーペットが敷き詰められた床を歩き出す。
カーペットの下は硬い石でできているようで、僕の革靴が床を蹴るたびくぐもった音が鳴って、思わず足音を立てないように息を潜めた。
…不法侵入くらいなら、ちょっと、すこし、だいぶ怒られるだけで、済むよね？殺されたりしないよね…？軍のルールとか知らないけど。
そもそも僕木の根元で寝てただけだし何も見てないし、うん。僕は何もしてませんってアピールすれば、不審者の疑いは晴れる、かな？
…でも、もし、殺されたら？
前を歩く相手の背中はなんだかピリピリしている様に思える。張り詰めた空気がこちらまで伝わってきて、ちょっとした静電気みたいに肌がぱちぱちする錯覚に陥った。
あぁ、神様。
そんなことを祈りながら俯いて歩いていたら、不意に別の声が聞こえて思いっきり肩が跳ねた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 317人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ニノ(プロフ) - みずきさん» コメント有難う御座います。実は第七話にてエイリアンネタを入れるつもりでしたが、没となりました。勿体無くて消せておりません。面白いと言って頂けて嬉しいです、そして応援ありがとう御座います！多忙の身故、細々とですが続けさせて頂きたく思います。 (2022年10月8日 23時) (
レス) id: 36c64675ec (このIDを非表示/違反報告)
みずき - わぁ、夢主くんがエイリアン？なの初めて見ました！めちゃくちゃおもろいです！応援しとります！頑張ってください！ (2022年10月7日 20時) (レス) @page35 id: 129e1b5429 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ニノ | 作成日時：2022年9月14日 1時
