オヌスミサマ ページ5
・
山内｢なんだそれ…｣
｢怖いよね｣
さらにそれだけじゃなくて。
オヌスミサマは、願いを叶える代わりに、その人の1番大切な人の記憶を奪うそうだ。
つまり、晶大がそう願えば、私は死んで晶大は大切な人の記憶を奪われるってこと。
しかも願いが叶った人は、その祠の前にお供え物をするらしい。
そんなの、ただの噂でしかなかったけど、最近、お供え物のみかんが置かれていたとか。
山内｢こっわ｣
｢ねーこわいよねー｣
山内｢運命を変えることしかできねえの？その、オヌスミサマって｣
｢らしいよ？｣
山内｢あいつの運命を変えてっていう願いしか叶えられねえのか｣
｢そういうことだよね｣
話しながらツリーハウスを降りる。
途中、晶大が手を差し出してくれてドキッとした。
…まあそれは、今はいい。
降りきって山道を歩いてると、｢でもさ、｣って晶大が続ける。
山内｢それっていいようにも使えるよね｣
｢え？｣
山内｢ほら、死んで欲しいとかじゃなくてさ、死にかけてる大切な人を死ぬ運命から救い出すことだってできるってことでしょ？｣
｢…確かに｣
山内｢…俺だったら、そっちに使うかな｣
｢え、｣
立ち止まって私を見下ろす。
やっぱり背が高くて、うるさい蝉の声と夏の暑さが、晶大の存在感を際立たせる。
夏は始まったばかりの暑さだというのに、ゾクリと鳥肌が立った。
…最近よくある。
晶大と目が合うと、離せなくなることが。
一瞬驚いた顔した晶大も、何事も無かったかのように話し始めた。
山内｢もしAが、病気とか事故とかで目を覚まさないってなったら、俺はオヌスミサマに頼んでAが死ぬ運命を変えてもらう｣
｢…でも、そうしたら、｣
山内｢俺の中の誰かの記憶はなくなるけど、なくなったことにすら俺は気づかないってことだろ？｣
｢…まあ、そうね｣
山内｢だったらいい。Aが生きていてくれるならそれで｣
｢…なんか、照れるんだけど｣
ふって微笑む晶大。
キャンプいつしようか、とか、今度映画見に行こう、とか。
話題は尽きない。
数年ぶりに来る懐かしい道を辿って、後どのくらい晶大の隣にいれるのかって考える。
…記憶はなくなるけど、なくなったことにすら気づかない。
私が生きていてくれるならそれでって、まるで本当に大切にされているみたいで。
もしかしてっていう期待は、年々大きくなっていた。
・
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 131人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「龍神NIPPON」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
(名前)あやか(プロフ) - 続きを待ってます！お願いします (2021年9月18日 15時) (
レス) id: 6c19d02f23 (このIDを非表示/違反報告)
ぷいん - いつか更新されることを願ってます…！ (2020年12月12日 10時) (レス) id: fe96328630 (このIDを非表示/違反報告)
花(プロフ) - 00xxxx1さん» 本当ですか！！！！嬉しい、ありがとうございます！！ 更新頑張ります！！！！ (2020年5月20日 0時) (レス) id: a7ed6a47fc (このIDを非表示/違反報告)
00xxxx1(プロフ) - 毎日更新楽しみにしています！！花さんの書くお話の中でもこれが一番好きになりそうです！！陰ながら応援しています！ (2020年5月20日 0時) (レス) id: 1f1bcc4b1b (このIDを非表示/違反報告)
花(プロフ) - ゴンさん» えぇ！？そんなそんな！！！ありがとうございます！！更新頑張ります！！ゴンさんのためにー！！！！ (2020年5月16日 17時) (レス) id: a7ed6a47fc (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：花
| 作成日時：2020年5月11日 10時
