早くしろ ページ21
・
晶大と話さない日は続いて、8月の後半。
放課後。
日直の私は、タラタラと仕事をする。
30分もかからない仕事を1時間近くかけて、疲れきった心と体に笑いが出た。
…こんなに参ってるんだ、私。
さ、日誌出して帰りますかって思ったときに、教室のドアが開く。
びっくりして立ち止まると、そこには、練習終わりで息切れした晶大がいた。
｢…え、ど、どうしたの？｣
山内｢…｣
顔を見れない。
私の顔を見せないようにしたいのに。
幸い、私よりもはるかに背が高いから助かった。
俯くだけでなんとかなってる。
すると、一歩一歩近づいてきた晶大が、急に私の顎を鷲掴みにして無理やり上を向かせた。
驚いて、手に持っていた日誌と荷物を床に落とす。
…久しぶりに、晶大と目を合わせた。
山内｢…｣
｢ちょ、離してっ、｣
山内｢…AA｣
｢っ、なによ｣
山内｢…ごめん。俺お前だけ何故か知らねえんだ｣
｢…ああ、えーっと、その｣
山内｢転校生？って訳じゃなさそう。他の奴らに聞いても濁すだけだった｣
｢あは…｣
私と晶大が幼なじみだと知る人たちには、｢晶大にAのことを聞かれても何も答えるな｣ってマサくんヒコくんが釘をさしてる。
…らしい。
深くは聞いてないけど。
それ以来、晶大に私の話はご法度になったんだ。
山内｢…なんで俺だけ、お前のこと知らないんだろ｣
｢さ、さあ？私に聞かれても…｣
山内｢…｣
｢なに、｣
山内｢ちょっとついてこい｣
｢えっ、ちょっと！｣
そう言って腕を引かれる。
途中で担任に会ったから、日誌を押し付けるように渡した。
大股の晶大にはついて行くのもやっとで。
薄暗くなった道のりを、引きずられるようにして歩く。
ずっと無言で。
そうして連れられてきたのは、あの秘密基地だった。
…うそ、まさか、そんな。
｢な、なんで、？｣
山内｢…ここ、俺のじいちゃんが作ってくれたツリーハウスなんだ｣
｢…へぇ｣
山内｢取り敢えず、上がって？｣
｢…｣
山内｢早くしろ｣
｢…はい｣
半ば脅しで、恐る恐るツリーハウスに上がる。
あの日運んだ5人分の布団は、綺麗に隅の方に置かれてた。
晶大は、ヒコくんたちとたまにここに集まって、布団を干したり掃除したりして管理してるらしい。
…そっか、放置されたままじゃなくてよかった。
・
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 131人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「龍神NIPPON」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
(名前)あやか(プロフ) - 続きを待ってます！お願いします (2021年9月18日 15時) (
レス) id: 6c19d02f23 (このIDを非表示/違反報告)
ぷいん - いつか更新されることを願ってます…！ (2020年12月12日 10時) (レス) id: fe96328630 (このIDを非表示/違反報告)
花(プロフ) - 00xxxx1さん» 本当ですか！！！！嬉しい、ありがとうございます！！ 更新頑張ります！！！！ (2020年5月20日 0時) (レス) id: a7ed6a47fc (このIDを非表示/違反報告)
00xxxx1(プロフ) - 毎日更新楽しみにしています！！花さんの書くお話の中でもこれが一番好きになりそうです！！陰ながら応援しています！ (2020年5月20日 0時) (レス) id: 1f1bcc4b1b (このIDを非表示/違反報告)
花(プロフ) - ゴンさん» えぇ！？そんなそんな！！！ありがとうございます！！更新頑張ります！！ゴンさんのためにー！！！！ (2020年5月16日 17時) (レス) id: a7ed6a47fc (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：花
| 作成日時：2020年5月11日 10時
