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「フッ」
挙動不審な私を見て一瞬だけ彼の口元がダレた
ドキィッと心臓に驚きが走る
「ねぇ。一個聞いていい?」
『ど、どうぞ』
「さっき保健室行ってたらしいけど、どうしたの?」
本人を目の前にしてそんなの……
言える訳が無い
しばらく話さない私を見て、彼は悲しそうに瞳を揺らした
「……俺には言えないことなの?」
『うん』
「そっか」
彼はそう言って席を立ち上がった
「言いづらいなら言わなくて良いけど、浅野クンに先越されたみたいでムカつくからさ。ちょっと抱き締めて良い?」
『えっ』
私の有無を聞かずに。正面からふわり、と彼は腕を巻き付かせてきた
突然の事で頭が真っ白になる
「はーっ。やっぱりAの事離したくないなぁ」
彼の甘い声でそう囁かれて、体温が上昇すると共に少し意地悪だと思った
私は包まれていた腕の中からすり抜けて距離を取った
『赤羽くんずるいよ』
「……何が?」
『イヌ辞めて良いよって言ったくせに。平気でそう言うこというんだもん』
「……うん。俺やってる事矛盾してるよね」
『ねぇ私どうしたら良いのか分からないよ』
ポツリ、と呟くと彼は口角を上げる
「困ってるの?」
『困ってるよ!私いつだって赤羽くんの事で頭がいっぱいなの!』
爆発するように思いの丈をぶつけると、赤羽くんは心底嬉しそうにしていた
「それホント?」
『嘘だったらこんなに悩まないよ!』
「やば。超嬉しいんだけど。ねぇもう一回抱き締めて良い?」
『へ』
抜け出せたと思ったらいつの間にか、また彼の胸の中に居て ── さっき突き放されたばかりなのに今度は離してくれない
私振り回されてばっかりだ
こんな身勝手な行動でも、受け止めてしまう辺り随分赤羽くんに心を許してしまっている
*
キーンコーンカーンコーン
授業開始のチャイムが始まって我に返り、私は即座に離れた
……うわぁぁあぁっ!教室で私何してるんだ!
『あ、赤羽くん!つ、つつ次の授業って何だっけ!』
「数学」
『アハハッ!そうなんだ!き、教科書出さなきゃだねっ!』
ドサドサと机の上に鞄の中身を全部ひっくり返して、山盛りの本から一冊一冊手に取って探す
「ねぇさっきから何してんの」
『あぁぁあっ!あんなことされて落ち着いてられるかぁあっ!』
完全にパニック状態だった
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潰れたいちご(プロフ) - この作品、「好きだから。」という曲がピッタリだと思います!よければ聞いてみてください! (2022年5月9日 19時) (レス) @page25 id: 2cda77c812 (このIDを非表示/違反報告)
ハバネロ(プロフ) - ご協力感謝致します!(*´-`*) (2019年6月20日 23時) (レス) id: acb4ef891f (このIDを非表示/違反報告)
みくり - 私も、授業中とか種転がってないかさがしてみます!!(笑) (2019年6月20日 23時) (レス) id: 2a3b3aad81 (このIDを非表示/違反報告)
オタク少女(プロフ) - ハバネロさん» じゃあまた2人をいじる材料を探しますね!(黒笑) (2019年6月20日 21時) (レス) id: 3dab4c0edd (このIDを非表示/違反報告)
ハバネロ(プロフ) - 御二方お便りありがとうございました!喜んで頂いて何よりです!またラジオをいつも盛り上げて下さるのは私では無く、このようにお便りを下さるからですよ(*´ ∨`)シチュエーションを考えるのが凄く楽しかったです!これに懲りずまた何かあればお申し付け下さい! (2019年6月20日 21時) (レス) id: acb4ef891f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ハバネロ | 作成日時:2019年6月7日 12時