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〜 Colon side 〜
痛いほどに高鳴る心臓を抑えながら、足早に教室から去る。
「はぁ…」
辺りに人がいないのを確認してから、僕はしゃがみ込んだ。
や っ て し ま っ た 。
幾らご褒美とはいえ、さすがにやりすぎただろうか。
教え子にキスだなんて。
生徒に恋をするのが初めてだった僕はどれが正解かなんてわからない。
約束は約束。
でも、恋人になんてなってはいけない関係。
本当にあんな点数とるだなんて思っていなかった、なんて自分で自分に言い訳するあたり、僕はまだまだ未熟だ。
「ころん、どうかした?」
不意に聞きなれた声が頭上から聞こえてきた。
「さとみくん…」
声の主の名前を呼べば、彼は不思議そうに僕を眺めた。
「なんでもない」
「そっか」
そう言ってさとみくんは僕の隣にしゃがみ込むと
「で、どうだったの?キス。」
なんて、真顔で爆弾発言をした。
「えっ…なんのこと?」
そう言っておどけてみるも、彼は悪戯な表情を浮かべるばかりだ。
「え、したんだろ?」
「しししししてない!口じゃないからセーフ!!」
「ふぅん。つまんないの。」
「てゆうか、なんで知ってるの!?」
「いやだってお前、あの教室に向かうまでずっと独り言呟いてたよ「キスキスキス」って」
「え、なにそれ。僕が変人みたいじゃん。」
「お前変だろ。」
なんて言って彼はケラケラと笑う。
「だって…」
「…まぁ、別に俺はいいと思うんだけどな。生徒と教師の恋愛。」
「でも、世間は認めてくれないし…。」
「難しいよなぁ…」
そう呟く彼は、さっきの笑顔とは真反対の大人びた真剣な顔つきをしている。
「…あ、そういえばさ」
「うん?」
話題を変えたさとみくんの言葉に相槌をうつ。
「あれ…いつ榎本に言うのかなって」
「あれって?」
「ほら…」
婚約者がいるってこと。
「…アイツだけには絶対に言わない」
僕の回答に彼の瞳が寂しげに揺れた。
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千景(プロフ) - ゆゆさん» ありがとうございます…曲自体が素敵な歌なので、雰囲気壊しそうで怖いですが、頑張ります!(私自身、ゆゆさんの作品を幾つか拝見させて頂いているので、コメント来た時にすごく驚きました(笑)本当にありがとうございます。) (2020年1月25日 20時) (レス) id: 0f5cbdbd1f (このIDを非表示/違反報告)
ゆゆ(プロフ) - おおおお……曲の雰囲気を壊さずに世界観をぐわーっと広げていてとっても読みやすいです。私の求めていた作品見つけられた気がしてます笑 更新頑張ってください〜! (2020年1月25日 10時) (レス) id: 1ae9e757ea (このIDを非表示/違反報告)
RIKO(プロフ) - 千景さん» いえいえ、!これからも応援してます…! (2020年1月20日 19時) (レス) id: 2f1eb9db7f (このIDを非表示/違反報告)
千景(プロフ) - RIKOさん» そう言って頂けて嬉しいです…!!ありがとうございます。 (2020年1月20日 17時) (レス) id: 0f5cbdbd1f (このIDを非表示/違反報告)
RIKO(プロフ) - はじめまして!この作品凄く好きです!!更新頑張って下さい! (2020年1月19日 18時) (レス) id: 2f1eb9db7f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:千景 | 作成日時:2020年1月14日 9時