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「わ・・・」
目の前に広がっているのは、すごく幻想的な光景だった。
真夏でも寒いと感じるんじゃないか、って思うくらい冷やされた建物の中。
円形ホールをめいっぱい使われた会場の中に展示されていたのは、氷の彫刻だった。
「・・・すごい」
「ほんと。迫力満点なのに繊細だね」
氷で作られた彫刻というものがあるのは知っていた。
テレビで見たことがあるし、写真もあったから。
媒体越しに見てもすごいって思っていたけど、生で見るとまた印象が違う。
動物を模ったものや、有名な建造物もあって。
ぱっと見ただけでなになのか分かるくらい精巧なのに、近付けばもっと細かく作り込んであるのが分かって。
正直、CGグラフィックとかのほうが雑なんじゃないかって思えてしまう。
「動画?」
いくつかの作品の横には小さなモニターが置いてあり、覗けば。
そこに流れていたのは彫刻の制作映像。
とても大きな氷の塊を削り出していく過程が映されていた。
すべてが撮られているわけじゃなく、時には一気に完成へ近付いてはいても。
工程にどんどん惹き込まれ、動画が一周し終わるまで凝視してしまう。
映像が止まり、はっと顔を上げれば。
動画に夢中になっていた俺を厭うことなく、光は隣に寄り添ってくれていて。
目が合えば、にこりと笑ってくれる。
「ほんと、すごいね」
「うん」
「これ、映像見る限り作家さんふつうに作業してるように見えるけど。実際は冷凍庫の中とかだったりするから大変だよね」
「そうなの!?」
「そ。大学にも氷の彫刻作ってる人いたけど・・・凍傷とかなってたよ」
いまはもしかしたら違う制作方法あるかもだけどね。
日々技術は進化し続けてるから。
ちょっと困った感じの表情を光は浮かべているけど・・・そうだよね、氷の彫刻に限らずなにかを創造する人って大変なことばかりだと思う。
いまでこそ光はデザイナーだけど、美大に在学中はいろんなもの作ってただろうし。
「ね、ひかる」
「ん?」
「また今度、ひかるが美大生だった頃の話聞きたい」
面白い話題なんてないよ?って光は言うけど。
別に面白くなくていい、苦労話だっていいから。
いまの光を形成している下積み時代を知りたいだけ。
「今度ゆっくりね」
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晶(プロフ) - 麻李有さん» こんばんは。さっそくお読み頂きありがとうございます。お好きな展開になっていて良かったです。今後もどうぞお付き合い下さい (8月28日 20時) (レス) id: ff1d608c56 (このIDを非表示/違反報告)
麻李有(プロフ) - こんばんは、遅い時間にごめんなさい。先日リクエストをさせて頂いた者です。こんなに早く書いていただき本当にありがとうございました!とてもとても面白くて私が好きな展開のお話でした。本当にありがとうございました。また次のお話も楽しみにしています。 (8月27日 23時) (レス) @page49 id: 6cf1168dd8 (このIDを非表示/違反報告)
麻李有(プロフ) - リクエスト了承いただきありがとうございます!いつまででも待ちます。ご無理だけはなさらないで下さい。楽しみに待っています! (8月17日 21時) (レス) id: 6cf1168dd8 (このIDを非表示/違反報告)
晶(プロフ) - トーストさん» とんでもないです。むしろなかなか思い浮かばず、出来の悪いもになってしまって申し訳なかったです。これからものんびり、お題消化していけるように頑張ります<(_ _)> (8月15日 12時) (レス) id: ff1d608c56 (このIDを非表示/違反報告)
晶(プロフ) - 麻李有さん» 改めてコメントありがとうございます。また、ご理解頂けたようで良かったです。リクエストの件、承りました。時間掛かるかもしれませんが、お待ち頂ければ幸いです。よろしくお願いします。 (8月15日 12時) (レス) id: ff1d608c56 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:晶 | 作成日時:2022年8月1日 1時