memories of dream house〜日常茶飯事〜

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　「美味しかった〜」

　「ほんと？よかった」

　前に打合せで来たとき、いのちゃんが好きそうって思ったんだよね。

　大学を出てからは光に促されるまま歩いて、電車に乗って。
どこに行くのかとかは全然聞いてないけど俺は光となら行く場所なんて拘らない。

　朝、ハウスを出る前に。
お昼頃終わるんだよね？迎えに行くから待ってて。
で、そのままデートしよっか。

　そう言ってもらった瞬間から俺はもう舞い上がっちゃって。
ふわふわした気分のまま大学へ行き、友人に声を掛けられるまで心ここに在らず状態だった。

　友人曰く、いつもと同じかそれ以上に有象無象から声掛けられてたらしいけど。
そんなの俺の知ったことじゃないし、いつだって無視してるから正直対応は変わらない。

　けど、その警戒心のないぽやぽやした空気感だけは収めてるほうがいいよ、なんて言われちゃって。
さすがに大学内では気を引き締めようとしたんだけど・・・まあ、光との約束思い出せば無駄だよね。

　「ね、どこ行くの？」

　ちょっと歩くけど大丈夫？聞かれて頷き返し、歩き始めてそろそろ２０分くらい経った気がする。
公共の交通機関使っても行けるけど変に遠回りになるから、ってことで歩いてた。
今日は時期の割に雨の心配はなさそうだし、めちゃくちゃ暑くもない。

　人通りがほとんどないことをいいことに、光と手を繋いでのんびり散歩気分。

　「見えてきたよ」

　目的地はあそこ、と光が指差したほうを見れば。
なんだろう・・・大きい建物があるのは分かる。

　「中はちょっと寒いかもしれないけど」

　寒くなったらすぐに言ってね、と光に念押しされている間に建物の正面へ着いた。
美術館とか博物館っぽいのを予想してたんだけど、ホール？みたいな感じがする。
コンサートとかができそうな。

　「いのちゃん？」

　ぽかーんとしてた俺を、ひょいと覗き込んでくる光。
どアップに驚いて顔を引けば、すぐ鼻先が触れそうなくらい距離を詰められて。
ぶわっと赤くなる俺を見て目を細めた光は、なんだか楽しそうに見える。

　「ほら、入ろう？」

　いつ取り出したのか、チケットをひらひら振っている光に手を引かれ―――外との気温差に身震いするほどひんやりしている建物内に入った。

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