【呪術廻戦】彼女が最期に、残したもの。

episode.9 ページ9

□夏油side


「美味しいかい、アイスクリームは」


こくっと頷くA。顔が少し隠れる帽子をかぶっていて影が出来ているため分かりづらいが、驚いているのだろうか。あぁ、ちょっと冷た過ぎたか。


今日は、本屋さんに連れて行くため外出する事になった。その為休みを手に入れるためにスケジュールを調整しまくった。


上から雪崩れ込む任務と悟の我儘にと日々奮闘していたんだ、Aを独占するというご褒美くらいあってもいいだろう。


「甘いものは好きかい？」


甘いもの……とボソリと口に出してから、こくんと頷く。やはり親が親なら子も子だな。


「…………」


今日は日曜日、祝日だ。それもあってか家族連れが多い。だから、Aと同じくらいの年頃の子供もたくさんいる。そちらに目を向ける、A。


…………恋しく、なってしまったかな。


私はいくら努力してもAの親にはなれないからね。悟、お前だけなんだよ。


「………………Aにも、家族はいるんだよ」


その言葉に、今までとは違う反応を見せた。目を見開き、口が塞がらない。


「君にはお父さんがいるんだ。まぁ、お母さんもいるけど今はお空にいるんだ。

お父さんはね、君と同じ見た目なんだよ。綺麗な白髪で、綺麗な碧い目。Aとおんなじ。

それはね、この世界じゃお父さんとAだけ」


その言葉を聞き、少し嬉しそうな顔をした。この顔は、初めてだ。


周りに同じような見た目の人はいなくて、家族もいないと思っていた。けど、いるんだと聞かされて嬉しく思ってくれるんだ。その反応をしてくれて、私も嬉しく思ってしまう。


早く、会わせてあげたい。


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