episode.167 ページ15
◇貴方side
コンコン、ととある病室のドアをノックした。
田中「はい」
「失礼します」
田中「あら、この前の先生。こんにちは」
「こんにちは。今日から田中さんの担当医になります、赤羽Aです」
この人は、田中優美さん。
この前、迷子だった蒼汰くんと結ちゃんのお母さんだ。
「前の先生から、紹介状を出していただいたそうで」
田中「えぇ、腕のいい先生がいますよって教えてくれたので」
この前、パパから渡された田中さんのカルテ。
見たことのある、よく知っている病気に彼女は苦しめられていることが分かった。
「手術をご希望と聞きました」
田中「えぇ、」
「難しい道のりになることはご承知のはずですよね、」
田中「えぇ。でも、お願いします」
「そうですか……」
この病気は、手術の成功率は低い。
田中「私、最初は諦めてたんです。でも、夢がいっぱいできちゃって」
「夢、ですか」
田中「えぇ。あの子達の運動会を見に行きたいし、あと学校の入学式、卒業式にも参加したくって。あと、自分の作った料理も食べさせてあげたい。
あ、あと家族旅行にも行きたいですし……あ、ごめんなさい」
目を輝かせて笑顔で話している田中さんを、お母さんと重なって見えてしまった。
病名が一緒だからかな。いや、違うかも。
田中「あの子達の成長を、自分の目で見て、感じて。一緒に歩みたい。そんな我儘、抱いてもいいのでしょうか」
「素敵な夢ですね。いいと思いますよ」
それは、我儘なんかじゃない。願いだ。
田中「ふふ、ありがとうございます」
「わかりました。一緒に、頑張りましょう」
田中「はい！よろしくお願いします！」
精一杯、私の持てるすべてを駆使して。
絶対に成功させてみせるよ。
無理かもしれないけど、見守ってて欲しいな。
大好きな、お母さん。お父さん。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 323人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「名探偵コナン」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ゆな
| 作成日時：2019年12月4日 19時
