四通目 ページ6
今日も殴られた。
最近は父の機嫌が悪い。
あの日、血まみれの状態で家に帰ると、そのまま平手打ちをくらい、服を脱がせられ部屋に押し込められた
なにか罵詈雑言を吐いていた気がするが、もう聞く気にもなれない
服はその日以降見ていない
きっと捨てられたか燃やされたのだろう
数少ないお気に入りの服だったのに、またタンスの中が少し寂しくなった
彼を助けて3日が経った
自分は一度も部屋から出させてもらっていない
今回は随分とお怒りのようだから、当分は無理だろう
なんて他人事のように考える
彼は無事だろうか
暗くてよく顔が見えなかったが、いつか会える日は来るのだろうか
あの日見た光景は自分の記憶の中に鮮明に焼き付いている
あんなことが起こったのは初めてだから、きっと一生忘れることは無いだろう
「目が覚めたかな.....」
あの怪我では生きているかどうかも怪しいだろうが、なぜだか彼が死んだとは一ミリも思わないのだ
悶々と会えもしないのに思いをめぐらすこと3日間
殴っても反応がない娘を見て父は興味を無くしたかのように、自分に関わってこなくなった
それがいい
とっくに父と思わなくなって何年経っただろうか。
押し込められた部屋の中1人じっと時間が過ぎていくことだけを待つ日々
本棚に揃えてある本は全て読んだ
送られてくる顔もわからない異国の商談相手からのプレゼントはどこかくすんで見えた
暖炉の火すらもつけようとしない自分に嫌気がさした
........コツコツ
「......？」
どこからノックの音が聞こえる
いや、ノックじゃない。何かをつつくような......
コツコツ
「.....窓？」
格子に囲まれた窓に目をやると、1匹の鷹がとまっていた
「鷹....？」
一体誰のだろう。近づいてよく見てみると足元に何かが括り付けられている
ガチャりと自分より高い位置にある鍵を開け、窓を開いた
「わっ....！」
ピィと一声鳴き、その鷹は翼をバサッと広げる
「....これ、私にくれるの？」
手触りのいい赤いリボンで丁寧に括り付けられた手紙をそっと鷹の足から外してやる
それを見届けた彼、いや....彼女？はそのまま飛び立っていってしまった
「あっ......！待って！！！！」
そう呼んでも大空へ羽ばたいた鷹は振り向かない
取り残された私は手紙に目を落とした
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作者名：らっか | 作成日時：2022年7月3日 18時
